<第二日目>
雲取山山頂往復→雲取山避難小屋(08:05)→狼平→飛龍権現→将監峠→唐松尾山→黒槐ノ頭→水干→笠取小屋(18:15)
今回もお世話になった雲取山避難小屋
目が覚めて携帯を見ると、4時45分だ。
暖かくぐっすりと眠れた。モンベルの軽量シュラフはなかなか性能がいい。
さてと・・。
ハンガーリングしておいた雨具やパーカー、スパッツのたぐいはほとんど乾きもせず、グズグズの状態だ。
登山靴はと見ると、もはや絶望的だった。
あ〜あ・・・・・・・・・・
もう帰ろかな
この靴で、このあと4日も山歩きすることが考えられなかった。
びっしょり水分を含むアンダーウェアを着るのもいやだった。
何から手をつけていいかわからず、しばらく茫然となる。
20分ほどそうしていたが、よい策などあるはずもなく、とりあえず食事にする。
きのう買ったコンビニおにぎりはカチコチで、鯖缶もなかなか喉を通らない。
なんとか食べ終わると、外はもう朝日が眩しくなりつつあるようだ。今日は晴れるのだな。
こうなると、やはりここで撤退するわけにはいかない。
靴と靴下をどうしようか。
もう調理用の携帯ストーブで温めるしかない。
再びボンベにストーブを装着し、靴をかざす。片方ずつ、辛抱強く。
靴革の部分(合皮)を近づけすぎて溶かしてしまったりしながら、一時間半以上をかけて、かわるがわる乾かす。
靴下も乾かす。
年配の登山者の方が、ご親切にも朝日が当たってきた入り口のベンチに、雨具などを運んで乾かしてくださった。ありがたいことだ(この方は、今日もここに連泊されるという)。
7時くらいには、昨日お会いしたA氏が到着する。七ツ石から上がってきたのだ。
挨拶を交わしてすぐ、A氏は出発する。
乾かすのに時間がかかり、自分はまだぐずぐずしている。
着替えをし、荷造りをして、半乾きだが大分ましになった靴の靴紐を締め終わったのが、7時50分ごろだ。
山頂まで往復してから、くだんの年配の方に励まされながらの出発は、なんと08時05分ということになった。
まったく「登山にはあるまじき行為」と言えるだろう。
第二日目前半地図
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山頂まで、小屋から1分ほどだ。
8時ともなれば、もう登山客が山頂に何人もいるので、写真を撮ってもらう。
ここが東京都最高峰にして日本百名山の雲取山山頂だ。
右手の湧き上がる雲の先が飛龍山と思われる。
国師はその左手奥に霞む山影か?
これから長い長い奥秩父主脈をゆくのだ。
だが、まずは笠取小屋までたどり着かなければ。ここでのんびりはしていられない。
小屋からはすぐに急下りとなる。
ここからは、自分としては初めてのルートになる。
コメツガなどの奥秩父らしい森を下ってゆく。
08時22分、三条の湯分岐。
分岐の少し先の登山道から、雲取山を見返す。
250Mほどの急下りだった(8時23分)。
三ツ山方向を見る(8時31分)。
9時10分、狼平か。
まき道だが、険しい斜面に細い登山道が貼り付くように、やっと通っている感じ。
転落の危険が常にある。
アップダウンもはげしい。
やっと、三ツ岩手前。
もう一つの三条の湯分岐(10時41分)。
先程の分岐から80Mほど高度を上げていくと、飛龍山分岐となる。
頂上は踏みたかったが、この先の時間配分を読み切れない。
巻くことにした。
飛龍権現の少し手前に、鹿が現れる。
立ち止まってシャッターを押したのだが、向こうもしばらくジッとこちらを見ていた。
権現様のお使いだろうか。
飛龍権現に到着。11時43分だ。
コースタイムに比べ、やや遅いペースだ。
小さなお宮がある。
ここは尾根の突端で、丹波山村への分岐ともなっている。
ここから、しばらく写真がない。
というか、息子から借りたカメラの使い方がよくわからなくて、ごちゃごちゃいじっているうちに、撮影した写真がほぼ全てホワイトアウトしてしまっているという失態をやってしまった。
第二日目後半地図
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飛龍権現を折り返すと、登山道の山手側に飛龍の水場がある。
ここで給水しようと思ったのだが、水音はするものの、ここは日差しが当たらないのか雪が付いて、とても水を汲める様子がないので、スルーした。
この水場はそもそも水量が少なく、夏場は涸れ気味だという。
手持ちの水は残り少なかったが(七ツ石の水)、この先2時間ほど進めば将監小屋の水場があるので、そこまではもつだろう。
だいたいがこの笠取山への登山道は、尾根の南斜面をトラバースするルートが大半で、夏場はかなり厳しいだろうが、この季節は日差しは強いものの気温はそれほど上がらない。
今日もよく晴れているが、吹き抜ける風はむしろ冷たいほどで、厳しいアップダウンにあえぐ体には心地よい。
大常木山・竜喰山の南斜面のまき道を小一時間も進んで行くと、なんと沢水を汲める場所があるじゃないか(13時15分)。
この写真のような場所が、2〜3箇所ほどあった。
ガレた沢の水なので、夏場は涸れるかもしれない。また水質がどうかわからないが、これより上に登山道はないし、飲んでみても、普通にうまかった。
キャリーも含めて充分に給水する。
給水できたので、将監小屋はパスし、将監峠・牛王院平を経て、「山の神土」という、なにやら神話的な名前の場所に着く。14時56分だ。
ここは分岐になっていて、写真左がまき道、右へ上がるのが唐松尾山を経て水干方向だ。
このほか写真では見えないが、右手前側に右折していくと、広大な山域を誇る和名倉山(白石山)を経て秩父湖へ下るルートとなる。
和名倉山は道迷いのメッカだ。遭難事例が相次いでいる。
しかしそう聞くと、いつかは地形図とコンパスだけをたよりに踏破してみたい、と思ってしまうのは、すでに病の域だろうか・・?
さて今回は、ぜひ水干を訪れたいと思っていたので、足が痛くなり疲労も蓄積しているが、迷わず唐松尾山へ直登する。
10分ほど登るとガレ場を高巻きする場所がある。
登山道を含めた斜面崩壊で、そのまま進めない。右手の急斜面をよじ登る。
ここも、どこまでよじ登ればよいのか非常にわかりにくい。ちょうど反対方向から来た登山者も迷っていた。
上の写真は高巻いたあとでふり返って撮影した(15時12分)。
写真の崩壊部分は法面の保護工事が行われているようだ。
この写真よりも前(左手方向)にも斜面崩壊部分があり、高巻きを余儀なくされる。
15時32分、西御殿岩分岐。
標識は、こんなもん。
登山地図に「眺めよし」とあるが、往復30分らしいのでパスするしかない。
唐松尾山への登り。
16時02分、唐松尾山到着
山頂にはあまり眺望がない。
唐松尾山から下った後に、登り返した先の尾根あたりと思われるが、立木の間から、雄々しき富士がドーンと見える(16時50分)。
これは写真取らねば。→ホワイトアウト。ああ〜
もいっちょ、ど〜ん・・・のはずが、遠景ホワイトアウト。
ちゃんと学習してきてくれよ。
しかたない。ケータイのカメラで撮ろう。
ケータイ、ガラケーです。
やはりこれがないと!
これは、黒槐手前の開けた尾根部分と思われる(16時56分)。
立木のまばらな感じといい、明るい笹原といい、私好みの風景だ。
黒槐山直下。17時08分通過。
このまま道は左にそれていき、南斜面のトラバースとなる。
これがわからなかった。
この手前に、「黒槐ノ頭」というのがあり、黒槐山との間をすり抜けるのだが、標識もなく、どこが「黒槐ノ頭」なんだよ、という感じ。
わからぬまま、このあと、トラバース気味にどんどん下っていく。
そして今回の山行で、最も道迷いをした場所がこれ。
まばらな立木の間の細い笹原道のトラバースを結構な距離下っていくと、突如道が180度折れ曲がる。
つまり正面に西日を受けながら下ってきたのに急に真東に向く。
そしてその登山道はかなり先までまっすぐに伸びているのだ。
道幅はわずか20cmほど。
これはおかしい!!
西に行かなきゃならんのに、なんで東に向くのよ?
20分以上、頭が混乱しながら行きつ戻りつを繰り返す。
尾根道を逸れたと思い、登山道と反対側へ登り返したりしてルートを探したがわからない。
西日が自分の顔に思いっきり照りつけているのだから、コンパスを使うまでもない。西がこっち。東はそっち。
だいぶ混乱する。しかも時間が押している。
まもなく17時30分だ。
ついに、このまま踏み跡どおりに進もうと決心する。
仮に違うルートに進んだとしても、このまま降り下ればまき道に出るはずだ・・・(相当標高落とすけど)。
こんな感じの笹原斜面(上写真)。
意を決して真東へ進むと60〜70Mでまた、180度折れ曲がって西を向いた。
こういうターンが、2回つづく。
登山地図では省略されているが、地形図を見ると、わずかに屈曲したギザギザが表現されている。
これだ、これに違いない。
だからここはもう黒槐ノ頭をとっくに過ぎた場所で、南斜面を降下中にジグザグターンが2回ある場所だったんだ。
やっと得心がいって進んでいくと、やがて笠取山への分岐が現れる。
笠取の頂上も、この時間では諦めるしかない。
さらに進むとすぐに次の分岐があるが直進する。
「源流のみち案内図」
製作者には申し訳ないが、これを見てもわかりづらいと思う。
水干到着。17時50分だ。
こんな感じで、チョロチョロだ。
多摩川の最源流であることの説明板がある。
水干を過ぎて進むと、夕映えの富士がその雄姿を見せてくれる。
さらに進むと、小さなピークを巻くカーブの手前に標識がある。
笠鳥小屋の文字が。まだかまだか。
水干から小屋までも、まだまだ遠い。
雁峠分岐の手前にある「小さな分水嶺」。
これがいわゆる、荒川、多摩川、富士川の三川分水嶺だ。 ここに落ちた雨のひとしずくが、それぞれへと流れ下って行く。
やっとたどり着いた笠取小屋。18時15分となっていた。
雲取りから約10時間。日没まぎわだし。
小屋に着くと、受付をすませ、テント設営場所を指定してもらう。それとトイレと水場を教えてもらい、天泊料金を支払う。
すでに多くのテントが設営を終わっている。
そりゃあそうだ。自分が一番最後だし。
普通どんなに遅くても午後の3時4時には、みんな着いてるでしょうに。
こういうのを「登山にあるまじき行為」、と言うのだよ。
<第二日目 終了>