2019南八ヶ岳縦走 第二日目

2019夏 南八ヶ岳縦走

第二日目(2019.08.03.Sat.)

◆通常のマウス操作で拡大・縮小、移動が可能です。
◆第二日目のルートは、ピンクの線で表現しています。出発地点の権現小屋、到着点のオーレン小屋までスクロールしてみてください。
◆この地図は、国土地理院電子地形図の地図タイルを使用しています。

翌朝は快晴だ。

早朝の権現岳山頂

権現岳山頂部。

ギボシ見返し

朝日を浴びるギボシを、小屋から見返す。

権現小屋出発

権現小屋出発。6時28分だ。 まずは目の前の権現岳ピークを抑えることにする。

権現山頂で記念写真

小屋裏を少し登ると尾根上の分岐があり、そこから右へ行けばすぐに権現岳山頂。 びびっとる。
標高2,715Mで記念写真。 ピエールのヘルメットのうしろが、いわゆる権現の<ピョコン>ですね。

ピョコンの裏側の恐ろしい崖

<ピョコン>の裏。こわっ。

ピョコンの上に人!

ピョコン見返し。上に人がいる!

核心部山域

赤岳の全貌とこれから進む道。ここから横岳までが今回山行の核心部だ。

ゲンジー梯子上

さて、例の有名な長バシゴの上部にやってきたぞ。
「君の名は?」
「わしか、わしの名は『ゲンジー梯子』というのじゃっ」

梯子下から

梯子を降りてきて見上げたところ。写真だと高度感が伝わらないな・・。60段ほどあるようだ

赤岳にガスがかかる

赤岳はもうガスってきてしまった。

阿弥陀岳

阿弥陀岳。険しさが際立つ。

ツルネ到着

キレット手前の「ツルネ」というピーク。 すでに晴れ間はない。

キレット小屋到着

キレット小屋到着(8:07)。
ペースが上がらずこんな時間になってしまったが、小屋前で少し休憩し、水場まで降りて給水する。

阿弥陀岳の険しい表情

一瞬の晴れ間に見る阿弥陀岳。 なんという険しさだろう。

本格的登りの開始

本格的な登りが始まる。

次々現れる岩峰

上の方には岩の少ピークが見える。あれを超えてもまた次のピーク、そしてまた次・・・

足元はえぐられている

転落に注意しながらガレた急斜面を登っていく。こわごわ振り返れば足元はバックリとえぐられ、霧が湧いて下が見えない。

急峻なルンゼの連続

上を見れば更に急峻なルンゼがつづく。

険しさが増す

険しいぞ、ひときわ険しいぞ。

濡れたハシゴ場

鎖の次はハシゴ場だ。霧雨でしっとりと濡れている。あまり上を見たくないぞ。

ハシゴ登りきり

ハシゴを登りきると・・・反対側も切れ落ちとるやないか。

頂上方向か、いやまだまだ

頂上方向だろう。左奥上方が山頂だろうか・・?
・・いやいや、これまでもそうやってダマされてきたんだ。

突き上げるような岩場

疲労もピークだが、さらに追いうちをかけるような岩峰が立ちはだかる。突き上げるようなガケを、岩角につかまりながらはい上がる。

分岐標識

分岐標識だろうけれど文字が消えていてろくに読めない。それに読む気力もない。

ルンゼにも花が

ルンゼにも花が。

まだまだ急登が

うんざりするほど、急登が次々に現れる。こんどこそ山頂かとも思うが、あまり期待せずに下を向いて登り続ける。

着いた

着いた。何も見えない。

赤岳山頂。標高2899M

赤岳山頂だ(10:42)。あ〜登りきったぜい。
標高2,899M。今回山行の最高地点だ。

北西側も切れ落ちている

山頂から北西はガッポリとえぐられている。
せっかく苦労して登ってきたと言うに、ガスでほとんど眺望はない。

仁王立ちのピエール

せめて誰かに写真撮ってもらおう。かっくい〜。

頂上山荘

頂上山荘から山頂を見返す。
とにかく疲れた。休憩しよう。山荘に入り何か食べるものはと伺うと、もつ煮込みがあるというからそれを注文する。
食べ終わると、ついウトウトとしてしまった。小屋の方に「中では仮眠はお断りしています」と言われ、気づくと1時間以上たっている。
行かなくては。

山頂出発

出発する(11:54)。
今日はさすがに登山客も多い。

展望荘到着

赤岳展望荘まで降りてくる(12:10)。ここまでの下りも、たいがいひどいものだ。それにもう降ってきたぜ、雨が。

阿弥陀岳見返し

展望荘発(12:18)。
一瞬、中岳・阿弥陀岳が見えたが・・・

このあと土砂降りに・・

・・・向かう先はこのとおり。
おいおい、下見えね〜ぞ。

このあとはもう土砂降りとなって、しばらく写真も撮っていない。
それよりも雷が轟きだした。そして音が近づいてくるこの感覚・・・
秩父の二の舞いじゃねえか。冗談じゃあない。 とにかくこの先の山荘までは往こう。雷雨がこれ以上ひどくなるようなら、今日はそこまでだ・・・。
※このとき、横岳直下に山荘があるはず、と思い込んでいるのだった。人の思い込みほど困りものはない。
<地蔵の頭>を12:24通過。

滑落!?

怖え=。

横岳への登りは思っていた以上に険しく、土砂降りで足元が非常に滑りやすい。斜面のトラバースで足を滑らせたらおしまいだ・・・。
そう思った矢先、恐ろしい光景が。
上から6名ほどのグループが下りてきたが、

「あっ」

という声で見上げると、一人が完全に宙に浮いている!
空中で背中が下を向いて一回転した!!!
下まで落ちてしまう!
と思いきや、すぐ下の岩棚の窪でかろうじて止まった。3Mくらい落ちてしまって、唸り声もない。 メンバーらが駆け寄り声をかけると、しばらくしてその男はむくむくと起き上がった。
・・・あまりの恐ろしさに、こちらは声も出ない。
岩の窪みがなかったらどうなっていたのだろう。200Mほども滑落するだろうか。
しばし呆然と立ち尽くすが、こちらに余裕もなく、先へ進むしかない。
それに、雷がまた近づいているのだ。

空中で完全に一回転している光景が、まるで動画のひとコマを切り出したかのように脳裏に焼き付き離れない。
すると今度は急斜面に寄りかかるように横たわる人がいる。
「大丈夫ですか」
「ええ、なんとか。雷が怖いのでやり過ごそうと思いまして」
見たところ自分よりだいぶ年配の方だ。
「そうですか。でもこれから天気は良くなる兆しもありませんよ。とりあえず山荘まで進んだほうがいいのではありませんか?」
(まだ横岳直下に山荘があると思っている)
するとその方は起き上がって、5Mほどあとから私についてくる。声をかけ合いながら進むことになった。

この先輩に先程の転落の模様を話すと、もっとひどい話を伺うことに。
権現岳の先の、例の「ゲンジーハシゴ」。61段の梯子だ。
先輩が下降していると、先輩よりさらに年配の70代とおぼしき男性が、ハシゴも使わずにその横を下ってきたのだという。
「危ないですよ」と声をかけるも、大丈夫だという。だが案の定滑落しハシゴ下で動かなくなった。慌てて駆け寄るとムクムクと起き上がるが、額からも肩からも出血し、シャツが血で染まっていたという。
レスキューに連絡しようかと問うと、「・・権現小屋まで戻ります」と言い残し、自力でハシゴを登り返して去っていったという。

・・・なんということだろう。なんという恐ろしい話だろう。

靴はグズグズ、雨具から水がしみて下着までぐっしょりと濡れている。横岳はまだか。

横岳到着

横岳到着(13:27)。
標高2,829Mの標識が雨にむせぶ。
「・・ここには、山荘はありませんよ」
「え」
ずぶ濡れで、展望もなく、感動を味わう間もなしに先へ。

コマクサ群落

<台座の頭>と呼ばれる小ピーク手前のタルまで来ると、幸いにも雨が小ぶりに。
見ると溶岩のザレ地の上に、コマクサの群落だ。右にも左にも!
高山植物の女王と呼ばれるこの花は、こんな栄養分の乏しいところを選んで咲くのだな・・

堂々たる硫黄岳 コマクサ群落を過ぎると、硫黄岳の堂々とした山容、そして・・

手前に硫黄岳山荘

・・・手前に「硫黄岳山荘」も見えてくる。
あ〜ここで休もう。濡れた服を乾かそう。何なら今日は、もうここに泊まってしまおう・・・。
同行の先輩は、本日はこちらで宿を予約しているという。
しかし、ここで雨は完全に止み、曇り空ながらも山々の景色が広がってきた。
ピエールよ、どうするのだ。

硫黄岳への登り

硫黄岳山荘には14:05到着。
「私は今日はこちらにやっかいになります」
「そうですか。自分は先へ行きます」
「横岳手前で、先へ促してもらってよかったですよ」
(横岳に山荘があると勝手に勘違いしていたので、なんとなくバツが悪い)
「・・それではお先に」
「どうか、十分気をつけて」
こうして硫黄岳へ、こんどこそ眺望が期待できるはずだ。

台座の頭と大同心・小同心

少し登って見返せば、正面が先程の小ピーク<台座の頭>。その右に尖っているのが<大同心・小同心>と呼ばれる岩峰群。右は阿弥陀岳

足元にコマクサ

足元にコマクサ。美しい。

ケルンを目印に登る

左にジョウゴ沢爆裂火口を見ながら、ケルンを目印に登っていく。

赤岳方向見返し

中腹から赤岳方向を見る。もう雲が湧いてくる。

雲湧き上がる大同心・小同心

大同心・小同心、横岳、赤岳、中岳。

妖しい空

妖しく曇ってきた。

硫黄岳山頂

硫黄岳山頂(14:33)。
標高2,760M。
眺望はゼロだ。楽しみにしていた爆裂火口壁も見ることはかなわなかった。
今日は一日、雨にたたられてしまった。

夏沢峠へ・オーレン小屋へ

夏沢峠を経て、オーレン小屋へ向かうことにする。 シラビソの森を下り、小屋到着は15:38となった。
小屋につく頃にはまた雨になったが、せっかく担いできたテントだ。テン泊を決断する。
受付を済ませ、テン場に向かうと、もういい場所は全て埋まっている。仕方がない。地表面が斜めで岩も出ているが、ぐずぐずしている間はない。本降りにならないうちに幕営し、食事をとって寝袋にくるまる。早く寝て明日に備えよう・・・。

だが夜中に何度もうなされて目が覚める。

・・・自分は一人ヤセ尾根を歩いているが、足元までをも霧が埋め尽くしている。踏み外さぬよう慎重に歩くのだが、

「あっ」

と思う間に、足元の岩が崩れるのだ・・・

そうして目が覚める。これの繰り返し・・・嗚呼。

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