ピエールさんの山菜日記 2024⑥

2024年4月13日(土曜日)晴れ

山菜日記と銘打ちながら、採ってるのはクレソンだの菜の花だのそこら辺の草ばっかりじゃあないか、という批判がある。

そのような批判に対し真っ向から立ち向かうためにも、ここらで山菜の王様「タラの芽」だの、 山菜の女王「シドケ」だの、「ヤマウド」だのを採っておかなければならない。

そこで今回は登山を兼ねて山に入り、山菜を探してみることにする。 4月となり、そろそろ「タラの芽」や「コシアブラ」の季節だ。「ウルイ」や「コゴミ」もあればなおよい。

埼玉県某所へ向かい車を走らせる。今日は某谷を詰めることにした。地元の人間しか入らないマイナーな谷だ。 林道のゲートで車を停め、朝日差し込む美しい渓に沿って林道を2時間ほど登ってゆく。

某所の某谷を遡行する
途中林道をはずれて河原に降りられるところもある。草をかき分け渓に降りる途中に、 きれいな「ゼンマイ」を見つけた。 ちょうど食べ頃ではあったが一株しかない。 二、三本採って帰ったところで扱いに困るので手を付けずに進む。

流れは細いが美しい渓流だ。 途中一人二人、山菜取りと釣行の人を見かけた。

川を少し進むが、落ち込みが出てきたので林道に復帰する。

渓には大小の落ち込みも

林道を進むのも楽しいものだ。あちこちに春がちりばめられている。

鮮やかな黄緑色の若葉を輝かせているのは「リョウブ」だろうか。

リョウブだろうか
「リョウブ」も「コシアブラ」のように先端の若芽を摘んで食するそうだが、これが本当に「リョウブ」かどうか自信が持てない。

林道は渓流の左岸を通っている。登りながらあちらこちらと見ていると、 右手の岩壁に山水が滲み、一面に小さい植物が生えている。

岩に密生するのは・・

これって、「ウルイ」でないかい? どうやらウルイのようだが、ずいぶん小ぶりだなあ。 帰りも同じルートだから、場所を記憶しておいて帰りに採って帰ろう。

しばらく行くと、ありましたよ、「タラの芽」が。

やっと見つけたタラの芽だが・・・

ところが手が届かない。 大木になってしまっている。ちょっと採取は無理だ。 それにもう3日くらい経ってからがちょうどいい採り頃という微妙な大きさだったので、涙を呑んでスルーすることに。

道中のヤシオツツジが美しい。

ムラサキヤシオ

尾根上まで登ってきた。ここら辺は林道開発が進んだのだろう。地理院地図にない林道が多数ある。

尾根上で遠望が可能となる

尾根を回り込んで林道はまだ続いている。舗装こそされてはいないが。

もう少し進んでみる。 すると斜面に地層の露頭が・・・これは!

地層の露頭が

風化が進み、全体が黄褐色を帯びているが、見事なまでの地層褶曲の露頭が見られる。

顕著な褶曲が観察できる

大陸プレート同士の衝突で地層は波打ち、さらに断層の働きなどで複雑な縞模様となる。 そのようなプレートレベルの大きな力が作用した地層断面が、 幅10M程ではあるが、このような秩父の山の林道脇にも現れる。

どのような岩質なのか。落ちているものを拾い上げ観察してみる。 断面は青みがかった暗灰色で、石英なのか白い斑が入る。そして非常に硬い感じだ。

巨大な圧力でこのような固い岩石に

チャートだろうか・・・それとも石灰岩か。 残念ながら同定できないが、どちらにしても海底に堆積した数億年前の生物たちの痕跡がここにあるわけだ。 それらは太平洋の海底火山のヘリなどに数百~数千Mも堆積したまま、 海側プレートに乗って移動し、大陸プレートに衝突する。 その際海側プレートは地殻の下に沈み込むが、海底堆積物の一部は陸側プレートの上に乗り上げ、 付加体として山地を形成する。 現代の土木・建築構造物の多くは、これら付加体としての石灰岩によって成り立っている。

タラの芽もちらほら出てきたが、あと数日後が食べごろといった感じだし、みな背が高く手が届かない。

林道沿いにもタラの芽もあるにはあるが・・・

AM10:50、そろそろ帰ろう・・・ 空は薄曇りだが気温は高くなってきた。

春が山々へ駆けあがってゆく

林道の中で尾根に這い上がると、登山道が通っていた。 ムラサキヤシオもあるが、なんと「アケボノツツジ」が咲いている。

アケボノツツジ

アケボノツツジの花弁はやや大きめの薄いピンク色だ

私はこのアケボノツツジが大好きなのである。 最も印象に残るのは、九州の大崩山山系に分け入った時の事。 渓流沿いや険しい岩場などにも咲くのだが、ソメイヨシノと同様、葉も付けぬうちに花が咲く。 早春の空のもと、ほんのりとしたピンク色の大きな花が灰色の岩場を背に、フワフワと咲き誇る。 夢のような、桃源郷のような風景を忘れることはできない。

それが、今ここに。

今は盛りと咲き誇る

ヤシオツツジも美しく咲き誇っているが、

山を彩る

やはりこの時期のアケボノツツジは、唯一無二のものと思う。 木は案外高木となる。このため見上げることに。青空に浮遊する花弁がなんとも美しい。

青空を背に咲くアケボノツツジ

林道を下ってゆく。

山桜も満開だ。

山桜

針葉樹の緑に桜が映える

斜面にはこのような大岩も。

水のしみ出すこの岩の脇を登れば何か採れるだろうか

岩の脇を登れそうなので少し登攀を試みるが断念。 ここら辺の山はみな、これでもかというほど急斜面だ。

このような花も。 釣鐘状の紫の花を咲かせているが、確か毒草であったと思う。

美しい花には毒がある

斜面が崩れ、土と砂礫が堆積したような場所に「ノアザミ」が数株あったので、いただいていくことに。 砂礫に埋まっている茎の下の方がおいしいので丁寧に掘り上げる。

ノアザミ

さて下山するぞ。

山桜咲き誇る山々を後にする

林道を下り渓流沿いを歩くようになる。 朝と別な場所で渓に降りてみる。 少し川幅があって小さな中州のような場所で、持ってきたパンでも食べようかとしていると、

コゴミを見つける
「コゴミ」じゃないの?これ。

株元の部分に採り頃のものがある
群落というほど株数は多くないが、いただいていくことに。 サッと茹でてマヨネーズが最高で、ナッツのような香ばしい味がする。

下流へと進む

川の中を静かに進んでゆくと、森に光が差し込み、幻想的な風景に。 しばしたたずむ。

両手を水に入れ、冷たさの感触を楽しむ。

しばし座り込んでこの景色を堪能する

途中岩壁に生える「ウルイ」も忘れず採取し、車に戻ってきた。

美しい渓であった。 この谷筋は本流から枝分かれしたものだったので、 本流を少しだけ上流側にドライブしてみる。

途中何カ所かで車を停め河原に降りてみたが、あまり何もなかった。

上流の河原
湧水が流れ込むところで「葉ワサビ」を見つけたので何枚か摘んで帰る。 アザミだのと一緒に天ぷらにしよう。

自宅方面に車を走らせる。

帰路の公園の桜も満開だ

本日のミッションの締めくくりは、2週間前の宿題の「セリ」の収穫。

セリ

はたして時間をおいたので、出来はとてもよく生育していた。

よく成長していて採り頃だ

どうせこれ以上伸びれば固くなるし、草刈り機でまとめて刈られてしまう。 大き目のビニール袋2袋分、どっさり頂くこととした。 経験上、セリ鍋にするにはこのくらいでもあっという間に食べられることが分かっている。

セリ以外にも・・・

アカハコベ??_いくつか摘んで帰る
アカハコベなのかそうでない雑草なのかわからないが、持ち帰って食ってしまえ。これは死なないだろう。

これは食べない

これも食べない

帰路での里の風景①

帰路での里の風景②

以上で2024年度の山菜行は終了となった。

天ぷらはまずまず。セリ鍋は最高すぎるほどおいしかった。 セリ鍋には、セリ以外の野菜は一切入れない。エノキとシイタケ少々に、 鳥モモ肉と豚バラで水炊きにし、ポン酢で食す(ポン酢はアサヒポン酢と決まっている)。 極太の長さ40cmのセリをぶつ切りにして入れるのだが、太い茎部分もとても柔らかい。 香り高くとてもヘルシーで、様々な滋養に満ちている。 こんな贅沢も無いものと思う。