<第五日目 8月13日 火曜日>
久しぶりにゆっくり寝た気がする。
本日のルートは、前半が奥黒部ヒュッテから平ノ渡場までのアクロバティックコース、
後半が標高約1000Mの急登登り返しで五色ヶ原へ、というものだ。

AM6:52、出発する。


ここから木組みのやや危なっかしい橋で東谷沢の力強い流れを越える。
雪が降る前に解体され、春また登山シーズン幕開け前に組み上げられるに違いないこの橋に感謝しなければなるまい。
そうして維持されている橋だ。

東谷はこの橋から100M下流で黒部川と出会う。橋を越え、岩をよじ登ると・・・しばしの安寧が訪れる。

河川の運んだ土砂が平に堆積して樹林を形成したのであろう。
高木は無く、明るい林になっている。

これは木なのか草なのか・・・

地上5cm程。一面のミニチュア針葉樹林帯。

平和の森を過ぎ、小さな沢を越える。

沢の脇にあざやかなピンクの花弁。

ここから長い長い右岸のトラバースが始まる。
トラバース道はもちろん、ところどころで崩落している。

おっとっと・・・

だから、ところどころ崩れているわけよ。落ちればイワナの餌になるわけよ。

これはまた妖しげに咲く黄色い美しい花。
何だったかな。希少種のランに違いない。

もう、次々と。


危なっかしいところには必ず、美しい花や実がある。

下にはまた、危なっかしい橋が見える。

ひとまず降りねば。これがまた恐ろしい。

視界が開けるが・・・

目を凝らすと、白い岩肌に水平のラインが・・・。あれを行くのかね。

ザレた真砂土の斜面を進む。


途中にも花が様々に。

連続する木橋。

登ったり下りたり。

岬のようなところを回り込む。

気づくともう、黒部川は湖になっていた。

道が湖にせり出しとるやないか。
池ポチャはごめんだ。




延々と続くトラバース道に飽きてきたころ、やっと渡船場への降り口の標識が見えた。AM9:06だ。

船がくるまで1時間以上ある。ゆっくり過ごすことにした。
この船を利用するのは登山者だけでなく釣り人も多い。 途中追い抜いて来た釣り人二人も、奥黒部ヒュッテに泊まり黒部川を上ノ廊下方面へさかのぼる予定だったが途中引き返した、というようなことを言っていた。
そのうち女子も二人くらい来た。
しばらくのんびりしていると、自転車を担いで船着場まで降りてくる若者がいる。 驚いて、どこから来たのか問うと針ノ木小屋から来たという。 なんだとお? 針ノ木小屋へはどこから来たのかというと、扇沢から針ノ木雪渓を登ってきたとか。 あまりのことに、「自転車こぐところなんてないでしょ?」というと、 「自転車が好きなんで、どこに行くにもこいつと一緒です」とのことだった。 すげえな。

着船したのでみんな乗り込む。

AM10:16頃、出港する。ちょっとフライングだと思うけど。

前方にずいぶんと急峻な尾根が黒部湖へと落ち込んでいる。

やがて平ノ小屋渡船場が見えてくる。

平ノ小屋到着。AM10:30だ。

AM11:00、出発する。

登るにつれどんどん気温は上昇し、蒸し風呂のような暑さに。 一方天気の方はというと、船着場では晴れていたものが一転して雲の多い空模様に。
苅安峠には12時過ぎに到着した。急坂で足にきてヘロヘロで、暑くて疲労困憊だ。
峠にはちょうどいい角度の岩がある。
どれ程ちょうどいいかというと、斜めの岩を背に両足を放りだして座り込むのにちょうどいいのだ。

頭がグラグラするほど眠い。 また寝るのか、登山道で? 目が覚めたらクマに半分くらいかじられていたらどうするのだ。 そうだ、その時はストックで応戦しよう・・・
ストックのヒモに手を通した頃には既に深い眠りに落ちていたと思う。
気づくと12:45にもなっている。
おそらく気絶したように眠り込んでいたのであろう。

苅安峠からもよじ登るような急登箇所がある。
峠の反対側を覗くと、滝を交えた急峻な谷だ。ザラ峠を源頭とする中ノ谷であろう。

雨がポツポツと落ち始めた。早くテン場に着きたい。
まるでペンキで塗ったような。

1時間以上ゼイゼイ言いながら登ってゆくと、急に傾斜が緩み木道が現れる。

本来なら鳶山などが見えるのだろうが、上の方は雲が覆っている。


ついにテン場が見えてくる。この山行で最後のテン場だ。


獅子岳南東尾根が見える。

テン場到着は15:20、平ノ小屋から「お昼寝タイム」を挟んで3時間20分。まずまずのペースだ。

雨が強くなるかもしれないので、幕営受付は後ですることにして急いでテントを設営する。 テントに荷物を放り込み、億劫になる前に山荘までひと登りすることに。
雨はどんどん強くなり、山荘の直前から土砂降りになる。

雨が弱まったので急いでテントに戻る。 帰りは下りなので10分くらいだ。 テントで少しまったりする。
明日は室堂から下山だ。久しぶりに下界に戻れるという安堵感と、この山行も明日で終わってしまうのかという名残惜しさとが入り交じり、 少し感傷的になっているところへ、外で歓声が。なんだ、なんだ?
雨が止み、西に傾く太陽が山々を照らし出す。

烏帽子岳方面であろうか。






テン場に咲く花々。

山々は赤く染まってゆく。

山の夕焼け。

第五日目の稿、了。

