2024笠ヶ岳から読売新道へ 第六日目 最終日

最終日である。
ゆっくり出てもよかったのだが、珍しく早く目が覚めた。

AM4:52、出発する。

まだ霧が濃い。

高層湿原にも流れはある。

高原の縁まで緩やかに登り詰めると、いきなり荒々しい景観が目を奪う。立山カルデラだ。

カルデラの断面を見ると色の変わり目のラインがあることがわかる。
数十万年の火山活動の中で、時を置いて火砕流や溶岩が積層して成り立っているのだ。

それにしても荒々しい岩肌である。

カルデラの縁の部分をザラ峠へ向けて下る。すっ転びそうになりながら、木の根や岩を掴みつつ慎重に下りていく。


ザラ峠到着。まだAM5:53だ。

ここまでカルデラの縁を歩いてきた。そもそもこの立山カルデラとは何か。
このカルデラ内に立山火山群の複数の火口があったことは間違いない。 ものの本によれば、巨大噴火によるいわゆる「陥没カルデラ」(大量の火山灰や火砕流が噴出し地下が空洞化して落ち込んだカルデラ)ではなく、 崩れやすい火山堆積物がどんどん浸食されてできた「浸食カルデラ」だということだ。
これほどの大陥没だから、浸食・崩壊のスピードも相当なものであったのだろう。
カルデラ内を流れる湯川谷は、下流で常願寺川に合わさるが、 繰り返される斜面崩壊によって度々大規模な土石流が引き起こされ、 下流の富山平野に甚大な被害をもたらしてきたという。 このため湯川谷では120年以上も前から砂防工事が続けられてきた。
立山カルデラの中にはかつて「立山温泉」があり、そこからザラ峠への登山道もあったようだが、 1969年の台風による大雨で崩れ、現在は営業していない。登山道は廃道になっている。
実際、カルデラ内は現在も工事関係者以外は立ち入り禁止のエリアとなっている。


五色ヶ原を何度も振り返る。この高原こそ溶岩台地だ。
溶岩と火砕流の積層断面が見て取れる。






花の終わったチングルマの綿毛が、朝露に濡れている。








登山道は鬼岳東斜面を斜上するトラバースになる。


濃霧の際、登山者が迷わぬようペンキが打たれている。

龍王岳への登り途中だろうか。



尾根上まで出ると、雲の湧き立つ中、立山方面が見えてくる。

龍王岳見返し。北東面は険しい断崖だ。

AM8:31、富山大の立山研究所の建屋前に到着。その先はもう室堂だ。

一ノ越分岐標識には、浄土山・室堂平の文字が見える。





AM8:50、浄土山到着。標高2,831Mだ。

おそらくは日本最北の3000M峰群。


分岐からちょっと寄り道して・・・


室堂へ下りよう・・。

浄土山から下り始めてまもなく、左手に今朝までいた五色ヶ原高原が見渡せるようになった。

そして奥には薬師岳。



降りていくと、下からビシッと決めたカッコいい女子が登ってくる。自分と同じ大荷物を背負っている。
お互いすれ違いざまに「こんにちわ」。「どこから来たんですか?」と言われたので、 新穂高から笠新道を上がって、笠ヶ岳からここまでカクカクシカジカで5日かけて歩いて来た、というと
「読売新道で来たの?!」
と言って、ずいぶん感心された。

彼女はこれから薬師方面へ行くという。天気が少し心配だ。 なんだかんだで10分くらい立ち話しをした後、「気を付けて」と言って別れた。
そうか、今年の長期山行ももうすぐ終わるのか・・・。

人間界を見下ろす。


AM9:53、室堂平に到着。人でごった返している。

ここからアルペンルートで人里へ帰る。 自分の足でなく、黒部ダムが作る電気の動力で。

黒部川下流方向。下ノ廊下へと続いてゆく。


何度見ても、このダムは巨大なコンクリートの塊だ。

ふと、上流方向を見返す。
赤牛岳は厚い雲に覆われている。
二日前にこの湖を見下ろした白いテラスも、赤い山々も、水気を多く含んだ雲にすっぽりと覆われていた。

最終日、六日目の稿、了。



