<7月19日、第二日目(北穂高小屋まで)>
4時過ぎに目を覚ます。
テントのファスナーを開けると、

そして快晴の予感しかない。
軽い朝食をとり、外に出てぐるりと見渡してみる。ちょうどモルゲンロートだ。





AM5:16、出発する。

まずは正面に見える北穂高沢沿いに登る。

振り向いて大雪渓を見上げる。

迷った末、テントだけは置いていった。


天気は申し分ない。


再び前穂北稜を見る。

ガレた登山道脇には沢水が流れる。水音も心地よく、一口掬って飲む。美味い。

じわじわと高度を上げてゆき、AM6:10にクロユリスラブに着く。

スラブ途中で右手に屏風のコルが見えてくる。

AM6:20過ぎ、東稜分岐と思われるポイントに到着。

少しだけ左手の南陵方向に上がってみると、


さて東稜取り付きへ向かう。
今回山行の唯一無二のミッションである北穂東稜はもちろん、一般登山道ではない完全なバリエーションルートだ。 危険個所が連続する険しい登攀ルートではあるが、距離はそれほど長くはない。
秋に行く北鎌尾根の肩慣らしとすれば最適なルートではあるが、万一滑落でもすれば命の保証は無い。 落石の危険などもあり、緊張を解くわけにはいかない。
ヘルメットの紐とともに、大いに気を引き締める。 だが愉しもう、この岩を。

東稜取り付きは正面上方のY字になった根元のところだ。
そこから雪渓沿いに右へ登り上げ、尾根上に至る。

だがその前に目の前の雪渓を越えなければならない。

慎重にステップを切りながら、何とか渉り終える。






絶景なのはいいが、登る角度は右を見ても左を見ても、いや増すばかりだ。

AM7:00、Y字の根元に着く。

南陵の方から何か声が聞こえた気がして振り返ると、恐ろしい光景が。
直径1M程もある岩が、とんでもないスピードで転がり落ちてゆく。
先ほど渡ってきた雪渓の向こう側を!
「ラーーーク!」と大声で叫んだ。
あちこちからも同様の叫び声が。
猛スピードで転がる岩は下方の樹林帯のなかへ消えていった。
あまりのことに、しばし呆然となる。 この急斜面を数百キロのスピードで転がる岩の直撃を受ければ、どんな構造物もひとたまりもない。ましてや人間など。
しかも自分の横切ってきた斜面を・・・
・・・気を取り直して進むしかない。 まずは自分のミッションに集中するしかない。
雪渓の上はアイゼンでもなければ登れない。
雪渓脇を登る。

登る、登る、どんどん登る。

尾根上が見えてくる。



先ほどの落石があった斜面を見下ろす。それは自分が通ってきた場所だ。

そのような恐ろしさとは裏腹に、初夏の、まだ朝の光の中に山々は輝いている。



花々も咲き誇る。

AM7:33、東稜へ取りかかる。

今回、このゴジラ攻略に際し、自分に課していることはただ一つ。
巻かずに尾根上のみを直登することだ。
ロープは持ってきていないので、全てフリーでの登攀となる。
行くぞ。


北側を見ると黄金平と横尾尾根、その奥に西鎌尾根、さらに遠方には鹿島槍ヶ岳、針ノ木岳。右手に大天井岳。


岩だ、岩だ。


まだ序の口だ。

↓上の方はこの通り。

南岳と槍ヶ岳。何という険しさか。








上へ。

有名な岩のバンドまで来た。



バンドを越えて振り返る。





北穂小屋は見えているが、



愉しいぞ、愉しいぞ。









そして恐ろしいぞ。

これを越えてきた。

今度は、ギザギザギザを下りる。
死なないぞ、俺は絶対に!
ああしかし、ゴジラの背もついに終わりを告げるのか。


下りる前にこれまでの軌跡を振り返ろう。
よくこれを渡ってきた。





大声で挨拶すると、向こうも手を挙げて返してくれた。 この方はSさんといい、インスタもやっておられる(7/19日の写真も上がっている)。
自分が下降を始めると写真を撮ってくれていた。
ありがたいことに、このあと上の小屋で写真を送ってくださる。
ゴジラの背、最後の岩壁を下降中のピエールさんだ(Sさん撮影)。



AM8:40、ゴジラの背コンプリート。コルに無事降り立つ。
あ~終わった。終わってしまったというべきか。危険極まりない場所ではあったが、実に愉しい岩稜帯を越えてきた。
けれどもまだ続きがある。
ここから標高差約170M程の急登を、北穂高小屋まで登り上げる。

登攀再開する。
少し登って振り返ると、ラスボスがこちらを見ている。

コルからも着実な三点支持で登っていく。



ここは右から廻り込むか・・・

振り返るとラスボスがあんなに下に見える。

しこたまな急登の岩場にも花々が咲き乱れる。


自分の胸板に、岩の斜面が擦りつくほどの急登だ。

AM9:16、ついに小屋下に到着。


まあ、よくやった。
当初の決め事通り、尾根上をほぼ全てフリーで直登した。
ハシゴを登り、小屋のテラスでおいしいコーヒーを頂こう。

第二日目前半、北穂東稜の稿、了。
