第二日目 前編
泣く子も黙るジャンダルム。。。そんな俗諺はどこにもないが、勝負の朝が来たようだ。
まず最初の勝負は「早起き」ということになる。 とにかく朝が苦手だ。 今回ばかりは普段の登山と違うので2:40起床。テントを撤収し朝食やトイレを済ませて、出発はAM4:40となった。 自分にしたらこれで登山早出の最高記録だが(4時台出発は初)、ほかの人はとっくに出ている。 あたりはまだ薄暗いがヘッドライトまでは必要ない。 緊張感はいや増すばかりだが、それを逆手に自らを奮い立たせて進みはじめる。
西穂丸山を過ぎてからなかなかペースが上がらず、 独標手前でもう1時間が過ぎてしまった。
独標からはこれから進む西穂本峰方面のほか、ジャンダルムや奥穂高岳、釣り尾根などが見えている。
独標から進み10峰で振り返る。 独標の下に今朝いた山荘の赤屋根が小さく見える。
「真下に降りる」という感じの岩場のクライムダウン。本日のコース中ではまだ「前菜の手前」のはずだが。
ここまで2時間45分とコースタイム未満で西穂高岳登頂を果たしたが、この先が本命なので感慨に浸っている暇はない。それにもうガスに覆われつつある。出発することに。
一瞬の気の緩みも許されない。浮き石の一つでも踏んだらあの世行きだ。一か所一か所の岩場ごとにもどしそうになる。
間ノ岳到着はAM9:26。前後のルートは浮石だらけの極めて危険なルートで、今シーズンすでに遭難事故で複数の方が亡くなられている。
霧の晴れ間に間ノ岳北面の全貌が現れる。どれほどエグい下降であったかを思い驚愕する。本当に自分はこれを下りてきたのかと。
間ノ岳と天狗岳の間の最低鞍部である間天のコルまであと一下りのはずだが、覗き込んでも下が見えない。 足元がえぐれているのか?そしてそれをまた下りるのか。
間天のコル到着はAM10:15頃。押し気味だ。行動食をとる。
ここまででも十分に恐ろしい思いをした。気を張ってここまで来られたが、ここからも連続した緊張を強いられる。
スラブとの格闘で写真を撮っていない。AM11:08天狗ノ頭到着。
西穂からここ天狗のコルまでを地形図で見ると、直線で1Km足らずだ。 この距離を4時間近くもかかってしまったが、コースタイムでも3時間が設定されている。 緊張の連続で、気を抜ける場所が一つもないというプレッシャーがかかり続けてきたのだが、 ここから約300Mを登り返し、ジャンダルム・ロバの耳・馬ノ背といった核心部がこの先に待ち受けているのだ。
待っていろ、ジャンダルム!