穂高連峰縦走 <第一日目>

プロローグ

穂高連峰を縦走する。

今回の山行はこれまでの自分の登山経験では最も危険度が高い。 西穂高~奥穂高~大キレット槍ヶ岳まで、北アルプス3000峰を結ぶ国内登山道最高難度のルートだ。 ルート周辺ではシーズン明けから遭難が多発し、死亡事故が既に数件起きている。 だが研究は十分してきたのだし、二年ほど前から行くのは決めていたのだ。 これまでの私の登山の集大成として挑むべき機は熟した。

例によって単独行、全天泊。

天気の様子をみながら、2023年8月16日を出発日とする。 コース概要は以下の通りだ。

第一日目:東京⇒大正池⇒西穂高山荘

第二日目:西穂高山荘⇒西穂高岳⇒ジャンダルム⇒奥穂高岳⇒奥穂高山荘

第三日目:奥穂高山荘⇒涸沢岳北穂高岳⇒大キレット⇒南岳⇒槍ヶ岳山荘

第四日目:槍ヶ岳山荘⇒槍ヶ岳上高地⇒東京

今回山行の核心は言うまでもなく第二日目と第三日目。 特に第二日目の西穂高岳から奥穂高岳へ抜けるルートは、 間ノ岳・天狗ノ頭・ジャンダルム・ロバの耳・馬ノ背など難所に次ぐ難所が待ち構えている。 二日目も北穂・大キレットを越えてゆく危険で長いルートとなる。 緊張感と強い決意をもって臨む必要がある。

必ず歩ききって見せる。もちろん生きて帰るつもりだ。

<第一日目> 2023.8.16.(水)

早朝に自宅を出発して立川からあずさの旅となる。 天気はあまりよくない。 松本AM9:38着。 松本鉄道に乗り換え、新島々AM10:40着。 そこからアルピコ号で大正池バス停に着くのがAM11:46。 身支度を整えて大正池を出発したのは12時過ぎとなった。

AM12:06大正池

西穂登山口へは一つ先の帝国ホテル前バス停が近いところを わざわざ一つ手前で降りたのはもちろん、大正池梓川沿いの風景を楽しみたかったからだが、 この頃にはすでに土砂降りに近い状態で景色どころではなかった。

雨の田代池あたり

写真もろくに撮らずに田代橋を渡り、登山口に到着したのが12時35分。 ここから西穂山荘までコースタイムでは3時間50分、標高差で860M以上登る。

西穂登山口

PM12:40。雨だが気合を入れて登り始める。

西穂中尾根は山荘まで樹林帯だ

ちなみに大正池から西穂までのルート上には給水個所はない。 途中「宝水」という水場があるが、水質を心配する情報があったので、 家から2.5Lを運び上げることに。 せめて大正池ホテル前に給水個所でもあればと思うのだが、誰かご存じないだろうか。

西穂山荘まではそこそこの急登なのだがよく踏まれているコースで登りやすい。 登り苦手な私にしては早いペースでPM15:25に山荘到着となる。 緊張でアドレナリンが多く出たのだろうか・・ 2時間45分で登ってきた。

西穂山荘到着

雨が止んだので急いでテントを設営し、山荘1Fの食堂でコーヒーをいただくことにした。

天場はお盆だというのにほんの数張りのみだ

地形図と登山地図を出して翌日のルートを再確認する。 明日は早くも今回山行のクライマックスだ。 エスケープルートも無し、難所の連続する厳しいルートを歩ききるほかない。 テントに戻り早めの夕食を準備して食べる。 あとはやることがないからさっさと寝る。 まず一番目の試練は早起き⇒早出。 どんなに遅くとも朝5時前には出発しなければならない。 そのためには午前2時30分過ぎには起床する必要があるのだ。 朝の弱い私だが、今回ばかりはこの掟を守る必要があった。 まだ18時前だが寝袋へ。

眠るんだ、眠るんだ。