10月12日 第三日目
昨日の雨はひどかった。 下着まで全身ずぶぬれ。小屋で着替えて就寝スペースで横になっても、 しばらくの間体がガクガク震えていた。
燕山荘は巨大な山小屋だ。宿泊者を受け入れ可能な人数は実に650人だそうだ。 北アルプス後立山連峰最北部の白馬山荘の収容人数が1000人を超えるらしいが、 この燕山荘もそれに次ぐ規模ではなかろうか。
三日目は朝5時前に目を覚ました。 外は夜明け前、雨は上がっていたが暴風が吹き荒れていた。 燕岳へ登るにもこの風ではな・・・
本日のルートを確認する。

服も下着もまだ乾いていない。どうしたものか・・・
ぐずぐずしているうちに7時をまわってしまった。 風は収まりつつあり、朝日が差してくる。
これはやはり山頂へ行かねば。
燕岳。言わずと知れた北アルプスの秀峰であり、花崗岩の白く輝く美しい山肌ゆえ「北アルプスの女王」とも呼ばれている。
AM7:43、出発する。
小屋に荷物をデポし、アタックザックのみで山頂へ。
山頂までは30分ほどだ。
美しい白砂の稜線を進む。

途中の岩陰から振り返ってみれば、先ほどまでいた燕山荘があんなに小さく見える。


山全体が白く輝いて見える。
花崗岩の岩稜帯だ。
やがて山頂が近づいてくる。
この時間は登ってくる登山者も多い。
AM8:00、燕岳山頂到着。標高2763Mだ。

雲は多いが、山頂標高付近の雲は無く、360度見渡せる。
まずは北燕岳・奥北燕平方面。昨日進んできた道。


一方の餓鬼岳を含む山域は餓鬼たちの住処だ。
東沢岳から先は登山道も無く、東餓鬼岳に向けて進む者はまずいない。











この山行も終わりだ。あとは中房温泉まで、合戦尾根を下るのみ。 帰りのバスは中房温泉10:45発、次は12:25だ。ちょっと間が空きすぎる。 10:45に何とか乗れないものか。
燕山荘の標高は約2700M、中房温泉が約1450Mなので、標高差1250M。 山と高原地図の標準タイムは2時間50分が設定されている。 北アルプス三大急登のこの合戦尾根を1時間短縮で下りるのはどうか・・・。
AM8:44、出発する。
間に合わなければ仕方がない。

5~6分下ると、尾根上に出て展望がきくようになる。




東餓鬼岳。薄曇りの空に明るく浮かんでいる。
こうしてやわらかい朝の光の中で眺める限り、冬晴れの気持ちのいい山歩きを楽しめそうな、穏やかな山並みに見えるだけだ。
本当に餓鬼たちが飛び回って、私に悪さをしていたのだろうか。 それにこの時期に、あんなにブルーベリーが実っていて・・・
でもあの甘酸っぱい味は、自分の舌の奥の方に確かに残っている。
現(うつつ)のことであったのか・・・。
つい昨日の事なのに、遠い昔の出来事のようにも思えてくる。
しばらく足を止め、その山並みを改めて眺める・・・。
・・・下山するか。
合戦小屋にはAM9:10到着。

小屋前に合戦尾根の由来を示す説明書きがある。

思わず読んでしまった。時間がない。
AM9:23、小屋前で13分も滞在してからの出発となった。
走る、走る。転がるように降り下る。
中房温泉まで標高差あと1000以上ある。
ピエールさんは下りのスペシャリストだ。
合戦尾根は燕岳への表通り。登山者も多い。 その登山者達を次々と抜き去り、飛ぶように駆け抜けてゆく。
そしてなんとAM10:38、バス出発の7分前に中房温泉に到着した。 合戦小屋での13分くらいの休憩時間を含め、燕山荘から実に1時間54分で下りてきた。
食い意地が張っているから、バスが出るまでに登山口の売店でソフトクリームを注文し、一気食い(一気なめ?)してしまう。
バスは定刻通り出発した。 揺られつつ窓にもたれかかると、餓鬼どもの事が思い浮ぶ。
晴れた日には恥ずかしがって、今頃は人目につかぬよう甲羅干しでもしているのだろうか・・・
ブルーベリー戦争_餓鬼・燕縦走の稿、了。