ピエールさんの山菜日記 2024②

2024年3月2日(土曜) 天候:はれ 気温3.9°C(AM6:00)

クレソン群生

 さて本年2回目の遠足だ。 2週間前の山菜行はまだ肌寒くセリ葉も伸びていなかったが、 3月となりそろそろクレソンが欲しくなる。 前回の成木川は敬遠して、最初から高麗川方面へ向かうことにする。 新青梅街道から八高線沿いを北上して入間川を越えて飯能市外に入る。 飯能駅周辺は河岸段丘と鉄道とで分断されているので直線的なルートが取れないのだが、 クランクしながら市街地を抜け宮沢湖脇から再び八高線沿いを北上して、 日高からわき道に入り高麗川へアプローチする。 駐車場に車を放り込むまで家から2時間。 ちょっと遠いんだよな・・ 橋の袂から河原へ降り、ゴム長を履いてお目当ての中州に向けジャブジャブと流れに入っていく。 ここでのお目当ては「菜花」の新芽を摘むことだったが、 はたしてそれらはあった!

野の菜花
今年もいただいておくぞぉ。 花をつける一歩手前の薹(とう)の部分を、先端から20cm程度でカットする。茎の太さは1~2cmだ。 アブラナ科のものは葉の部分も食べられるが、薹が長く伸びてくるとと固くなる。

薹(とう)をいただく(上から20cmほど)
いくつも種類があり、外来種も河川敷等に定着しているそうだが、 これはどの種類なのだろう。
同じ河原の別のアブラナ科の植物
菜花はスーパーでも売っているが、去年もここで採ってきて、 豚バラ肉を巻いて焼いて食べたら、まずまずおいしかったので、 今年もやってみようと思う。 ただ去年に比べ心なしか固そうな・・ まあ野のものなので、栽培種に比べアクもえぐみもあるだろう。 10本ほどを収穫する。

 さて思わぬことに、この中州に菜花だけでなくクレソンも自生していた。

特徴的な形のみずみずしい緑葉が水面に映える
去年には少ししか株が見当たらなかったが、ことしはまとまって生えている。 ほんとうにクレソンは毎年群生の位置を変えるのだな・・
群生するクレソン
一袋一杯にいただいていく。

 さてこれで引き上げるのだが、どこかに菜の花は咲いていないかな・・ 帰路に車を適当に走らせていると、八高線の線路沿いの土手に、 「菜の花」が咲いていた。これは畑に植わっていたものから種が飛んで育ったのだろう。 菜の花パスタと御浸しにしたくて、これも花の咲く前の薹を摘んで帰る。

 帰宅して下処理に入る。 クレソンは河原で採取しているので葉っぱなどのゴミや泥汚れがあるから、 何度も濯ぐ作業が欠かせない。傷んだ葉などもちぎって取り除く。 クレソンは白髭のような根まで含めて全草を食することができる。 なので茎や葉の付け根(成長の時期にはこの付け根部分が赤紫色の部分がある、汚れではない)はもちろん、 根の部分まで丁寧に汚れを洗い流す。 川で採ってきたものは売り物と異なりこの下処理に多少手を焼くが、 ほろ苦さとゴマのような独特の風味は、毎年のこの時期の楽しみとなりつつある。 それにスーパーで売っているのはほんの一束、7~8本程度だが、 こうした自然のものは沢山とれるので、贅沢に使うことができる。 サラダのほかに、我が家では鍋に大量に入れる。普通に野菜としてだ。 白菜や春菊などの代わりにクレソンを沢山入れて楽しむわけだ。 豚バラ肉などと一緒にほおばれば、シャオシャオの触感がたまらなくおいしい。

 次に菜花だ。 野のものはアクが強いので、まず1分弱程度下茹でする。 下茹でしたものを水切りしてバットにとり、豚バラ肉でらせん状にぐるぐる巻きにする。 先端部の緑の部分ははみ出してもよい。 こうして肉巻きにしてからソテーする。 今回は洋風にしてみた。 ニンニクを食感の残る大きさに切り、オリーブオイルで低温からじっくり炒める。 焦がさない程度、少し色づいた程度でニンニクだけ引き上げておく。 残ったオイルで肉巻きにした菜花をじっくりと焼いていく。 塩・コショウし、中火で焼き面を変えながら、 葉の部分が少し焦げる程度にまでじっくり焼く。 皿に並べ、取り上げておいたニンニク片をちらし、パルメザンチーズを振りかけて食する。 今年の菜花はすこし苦みが強すぎるくらいだったが、 茎はホクホク、葉はパリパリで、酒のつまみとしてもなかなかによろしい。

 菜の花はおひたしにした。 こちらもほろ苦い春の風味を存分に味わえて大変美味しい。 だがその前に、別にしておいた数本の菜の花をパスタにする。 ニンニクのみじん切りをオリーブオイルで、これも冷たい状態からじっくり熱を加えてゆく。 オイルに十分ニンニクの風味が移ったらタカノツメをちぎったものを加え、 みじん切りの玉ねぎ少々と、ドライトマトを細かく刻んで少量の水につけたものも 合わせて炒めていく。さらにミニトマト(半分に切ったもの)と、 菜の花も加え炒める(こちらは栽培種なのでアク抜きは必要ない)。 茹で時間短めに茹でたパスタと、パスタの煮汁も加え若干に詰めるようにして、 面とソースをよく絡めたら盛り付けて完成だ。 ブラックペッパーとオレガノ、パルメザンチーズを振りかけて食する。  春の風味を楽しむ日々が続く。

ピエールさんの山菜日記 2024

採ってきたフキノトウ
2024年2月17日(土曜)

天候:くもり 気温5.1°C(AM6:00)

前々日の2月15日、東京都心は21度まで気温が上がった。 一転して2月16日は最高気温が13度と前日より8度も下がったが、 それでもこの時期としては暖かい方だ。 2月17日土曜日の朝、午前6時の都心の気温は5.1度、青梅でも3.1度だ。 曇り空の中、少し遅めだが7時15分自宅を出発し、成木川についたのは8時半を少し回っていた。 いつもの駐車場に車を停めてセリ場の水路流れ込みを見に行く。 セリはあったが芽の出立てで小さく、収穫には早すぎる。 帰ろうとして水場の上の斜面に目をやると一面にフキノトウが出ているじゃあないか。 葉が開いているものもあったが、ちょうどつぼみの食べごろのものもたくさんある。 しかも大きい、上等のフキノトウだ。

ちょうど食べ頃
田舎でフキノトウは山ほど見てきたが、東京近郊でお目にかかるのは相当に久しい。 以前玉川上水沿いで見かけたことはあったが,もう無いだろうな・・ さっそく30株ほどをいただいて帰る。今日はてんぷらに決定だ。 そうすると「ユキノシタ」の葉っぱも欲しくなる。 そこかしこを見て回るがまだ小さいものしか出ていなかった。

今度は支流の黒沢川へ向かう。 クレソンの状態を見るためさっそく川に降り、昨年・一昨年に見つけた群落のある場所へ向かった。 だがなんだか様子が一変している。 一面芝に覆われ、昨年の流れ込みは枯れておりクレソン株は見当たらない。 中州に移動したと思われるクレソンの年越し株は何者かに刈り取られ、 根元の茎が腐って薄く変色し川面に漂っている。

俺の狩場が・・・

まあ、仕方がない。 クレソンはもともと株の場所をよく変えるようだ。 というより大雨などの環境かく乱で移動するのだろう。 もともと少し時期は早いのだし、2週間後くらいにまた見に来ることにしよう。 2~3株あった小さいものが、大きな株に成長しているかもしれないし。

隣の露川を見に行く。 川べりの歩道に近づくと、立派な望遠レンズをつけた一眼レフを構えるおじさんたちが数人、 声をかけると河原の草原に鳥がいるのだという。 これでは川に降りてジャブジャブというわけにはいかないな・・・ あきらめて車に戻りかけると、大きな鳥が向こうの畑に舞い降りる。 鮮やかな緑色の羽根の持ち主はキジであった。 しばし見とれたが、この日は帰ることに。 家に帰ってフキノトウ天ぷらパーティーだ。

その夜のフキノトウ天ぷらは、あらかじめ台所でほかの食材と揚げたものを食卓に持ってくるのではなく、 フライヤーをテーブルに備え付けて揚げながら食べることにした。 揚げ時間や衣の量は適当に、まずは天つゆで、次に塩で食べてみる。 ほろ苦い風味が広がるがそれほどフキの香りが強いわけではない。 ほかにエビやタコ、ちくわやレンコンなども天ぷらにする。 大きめのフキノトウ10株程を二人で半分づつ、野菜としていただいた。 年に一度の春の味覚を十分楽しんだ。

翌日、残りのフキノトウは御浸しにするほか、フキ味噌を作ってみることにする。

まずは御浸し。 タレをつくる。めんつゆをベースに生醤油、白だし、日本酒、みりん少々、お酢少々を小鍋で一煮立ちさせておく。 次に鍋に湯を沸かし、塩一つまみを入れてフキノトウ10株程を約2分茹でザルに取る。 タッパーを準備し水切りしたフキノトウにアツアツのタレを浸るほどまわしかけ、 粗熱をとったのちに冷蔵庫で冷やす。

次にフキ味噌だ。 フキノトウ5株程をみじん切りにし、ごま油少々で炒める。小ぶりのテフロンのフライパンを使用している。 フキノトウは刻むとすぐに酸化変色してくるので、刻んだらすぐに炒めだす。 炒めながら小ボールに味噌・みりん・砂糖・塩少々を加えスプーン一杯ほどのお湯で溶いたものを、 十分炒めたフキノトウのフライパンに混ぜ、弱火から中火でさらに炒める。 水分が飛び、味噌の香りが十分に立ってきたら出来上がり。 冷ましてから密閉容器に入れて冷蔵庫で保存すれば3,4日はもつだろう。 ちょっと味見したが、なかなかこれはイケる感じだ。

ピエールさんの山菜日記

以前からタラの芽を採りに行ったりする程度には山菜には触れてきたが、 動画サイトでその類のものを見ているうちに、昔食べた「シドケ」や「ミズ」を懐かしくも感じ、 「ウルイ」など最近でこそスーパーに売ってはいるがあまり知られていないものや、 「コシアブラ」「ヤマウド」「コゴミ」など、知ってはいるが採ったことも食べたこともない山菜を観るにつけ、 それじゃあ探してきて食ってやろうということになり、4年ほど前から近所の里山をうろつきだした。 近所といっても私の住んでいる国分寺には里山はなく、 山菜の採れそうな里山は最低でも車を1時間半以上走らせなければならない。 青梅や飯能のはずれのほうや、西武池袋線沿線や高麗川沿いを探りだす。 だがこれまでコシアブラ1本、シドケ1本とれたことがない。 それどころかフキノトウすら見つけられない。 「イタドリ」を何本か採って来たことはあったが、 茹ですぎたのかあまりうまく調理できなかった。 春に西武線西吾野駅に車を止め、登山を兼ねて伊豆ヶ岳から高畑山を一日かけて歩き回るも見つからず、 名栗湖から逆川沢を遡上して蕨山方面を探るも何の収穫もなく、 嫁からは「ムリムリ」と馬鹿にされる始末で、何とか一矢報いようといろいろ考えているうちに、 「セリ」や「ミツバ」はないか水辺を探してみよう、となる。

そこで高麗川巾着田へ向け車を走らせてみる。 自宅からは新青梅街道から岩倉街道を通り、 茜台の工業団地脇を抜けて入間川を越えるか八高線沿いにR-299へ出て北上するルート、 もしくは多摩湖の橋越えからライオンズ球場脇を抜けR-299に出るルートかだ。 後者のルートで高麗駅前へ出る。家からは2時間もかかった。 巾着田からは「カワセミ街道」という、日和田山や高麗神社の南東縁を走る気持ちの良いドライブルートがある。 高麗川沿いの某駐車場から、川へすぐにアプローチできる場所がある。 ゴム長をはいてざぶざぶと川面へ入っていくおっさんを、 幼児を連れた母親がいぶかしむように見つめている。 セリなどは本流に生えはしないが、用水路などからの流れ込みなどに見られるので、 なんとなく上流側へ進んでいくと、「お、クレソンか?」。

セリではなかったがクレソンの小さな株を見つけることができ、さっそく収穫。 カッターナイフで根を残すように切ってコンビニの袋に入れる。 初めて食えるものをゲットする。 もう少し何かないか探ると、中州に菜花が数株見つかったので、 若芽のよさそうなところを数本ゲット。 だがクレソンが一株分しかなかったので、ほかの小河川も当たってみようとなる。

今度は岩倉街道方面へ抜けて帰路につきながら、 あちらこちらと探っていく。 こちらには岩倉温泉の近くを流れる成木川とその支流があり、 某店舗の駐車場に車を止めさせてもらって川へアプローチしようとすると、 土手に「カンゾウ」がわんさか生えている。 私有地かもしれないがだれも目もくれないだろうということで、 茎の太いよさげな株を20本くらい収穫する。 これは御浸しにしよう。食べ過ぎはよくないらしいが、 この程度を数日かけて食べる分には問題ない。 土手から河原へ入ると待望のセリを発見。 こちらは一袋分いただいた。 別の支流も見に行くと今度はクレソンを見つけることができた。

以上が2021年度の成果で、セリとクレソンは十分な量がとれたので鍋パーティーとなる。 河原で採集しているので泥汚れを丁寧に落とす手間はあるが、 鍋で豚バラ肉や鶏肉と一緒に食べるシャオシャオのセリとクレソンは最高だ。

2022年、2023年と成木川とその支流の黒沢川、また入間川支流の露川などで セリとクレソンを探してうろつき回る。 2022年春には黒沢川のアプローチから下流150Mほどの左岸に用水路からの流れ込み部分のクレソン大群落を発見。 翌2023年春、前年の左岸流れ込みが途絶えており、クレソンもすべて枯れてしまっていた。 だがさらに100Mほど下流右岸の水路流れ込みにクレソンの大群落を発見し十分な収量を得る。 また2年前にカンゾウを採取した近くの水路流れ込みにセリの群落も発見した(河原のほうのセリはほとんど失われていたが)。 そして2024年を迎える。 今年は水辺以外にも探索の場を求め地形図とGoogleMapで数か所の候補地をピックアップしている。 記録的暖冬のなか、2月初めに東京では雪が降った。 東京にしてはかなりの積雪で1週間ほど経ってなお雪の残る場所もある。 その後暑さ寒さが交互に訪れる2月17日の土曜を、本年第一回目の山菜行と定めた。 まだセリも出ていないかもしれないが、まずは探索あるのみ。 (次号へ続く)