2019南八ヶ岳縦走 第三日目

2019夏 南八ヶ岳縦走

第三日目(2019.08.04.Sun.)

◆通常のマウス操作で拡大・縮小、移動が可能です。
◆第三日目のルートは、青の線で表現しています。出発地点のオーレン小屋、到着点の麦草峠までスクロールしてみてください。
◆この地図は、国土地理院電子地形図の地図タイルを使用しています。

早朝のテン場

早朝のテン場。

しっとりと濡れた森は美しいが、しっとりと濡れたテントやシュラフほど、うんざりとさせられるものもまた無い。
ぐしょぐしょのまま、畳むのかよ・・・

オーレン小屋の朝

オーレン小屋前。天気いいぞ。

小屋前の沢

小屋前には清冽な沢があり、水も冷たくて美味しい。
ゆっくり朝食をとったり、写真したりしていると、AM7:30にもなってしまった。
さっさと出発しろよ。
今日は最終日。
まず、目の前の箕冠山(みかぶりやま)に登り八ヶ岳主脈へ戻る。その後天狗岳から中山峠をへて、ニュウというピークを経て麦草峠へ下る、というものだ。

やっと箕冠山

ところが、全くペースが上がらない。ほかの登山客に軽々と抜かれてしまい、キバナシャクナゲ咲く箕冠山に着いたのは、8:30にもなっていた。

休憩だ

リュックをおろして早々と休憩する。オーレン小屋でたっぷりと給水してきたんだ。グビグビと喉を鳴らして水を飲む。

天狗拡大

箕冠山から少し下ると、天狗岳方面の眺望のよい場所がある。
左が西天狗岳。右は根石岳。中央手前に根石岳山荘も見える。

天狗の眺望

天狗の拡大。これも迫力あり。だがその前に根石岳だ。

根石岳から振り返る

根石岳山頂手前から。
お〜、きのう見られなかった硫黄岳爆裂火口、右へ順に赤岳、阿弥陀岳

南アルプス遠望

おおお〜。目をこらせば先程の箕冠山越しに、南アルプス
中央やや右が甲斐駒ヶ岳(2,967M)か?左奥に霞むのはもしかして北岳(3,193M)!!!すると真ん中はなんだろう?仙丈ヶ岳?それとも鳳凰三山がみえているのかな・・

東に奥秩父

東に目を転ずれば、5月に縦走した奥秩父の峰々ではなかろうか。 左に甲武信ヶ岳、右に国師ヶ岳、そして金峰山

硫黄岳爆裂火口

硫黄岳爆裂火口。
これがやはり、迫力あるな〜!

ニュウ方面

これから向かう、ニュウの方角。溶岩台地のように見えるが・・・。

天狗への登り

さて、天狗への登り。

根石見返し

根石岳を振り返る。白砂に一筋の登山道が続いてくるのだ。

青空へよじ登る

青空へよじ登る。

振り返り

また少し、振り返る。

天狗手前のハシゴ

天狗山頂手前には、緑色に塗装された梯子・・というか鉄橋がある。

東側の断崖

左を見下ろせば、これは高度感あるな〜。
落ちればひとたまりもないところだ。

東天狗山頂

東天狗山頂到着(09:23)。 赤岳方向。

赤岳遠望

主峰赤岳を遠望す。

爆裂火口ふたたび

爆裂火口。どうしても拡大したくなる。

西天狗

西天狗を見る。
天狗岳は、東西の双児峰になっているが、実は西天狗の方が標高が高い。
西天狗までをピストンしようかとも考えたが、はっきり言ってこの時間にしてすでに、激しく疲労している。やめておくことにする。

トンボ

東天狗をあとにする(9:49)。
主峰赤岳も、これで見納めとなる。トンボが別れに花を添えてくれる。

ニュウ遠望

ニュウの方向を見る。断崖の左側に見える突起のような小ピークが、それと思われる。

ゴロ石の中山方面

中山方面を見下ろす。
山荘の緑色の屋根が見える。どこの小屋だろうか・・・
それにしてもゴロゴロとした岩場が多い。 このあと、ゴロ石の大変さを、嫌と言うほど味わうことに。

天狗の奥庭

「天狗の奥庭」というところまで下りてきた。恐ろしげな岩が並んでいる。
ここまで、ずーっとゴロ石の上を飛び移るように下りてきたが、ゴロ石はどこまでも続いている。だんだん嫌になってきた。

石の上にて熟睡

もう限界ということで、石の上に大の字になってしまう。
そのまま30分以上熟睡する。私の横を多くの登山者が通過したに違いない。寝顔も見られたに違いない。
ははは・・

天狗の鼻をバックに自撮

目が覚めても足が重い。
中山峠へ向かって下りているはずだが、どうも道を間違えたようだ。後ろに天狗の鼻が見えている。

黒百合ヒュッテ

下っっていくと、山荘が。なんで〜?
どこの山荘かと思ったら、「黒百合ヒュッテ」だった。
そうか、途中の分岐を見落として、こっちに来たのか・・
11:08になっている。

ヒュッテがあれば休みたくなるのが人情だ。
中に入ると、アイスクリームを売っている。即座に購入する。
コケモモのケーキもあったので、昼食用にこれも購入する。
このアイスは1カップ¥500円と登山価格だが、疲労のピークを吹き飛ばしてくれた。

黒百合出発

11:38、黒百合ヒュッテをあとにする。
天気もいい。これから向かうニュウも、展望抜群のはずだ。 三日目にしてやっと眺望を楽しめるのだな。

中山峠

10分ほどで中山峠に着く。黒百合に寄らずにここへ直接下りてくるはずが、道を間違えたおかげでアイスを食べられた。 不思議と疲労がすっかりと回復した気がする。 アイスクリーム恐るべし。

稲子岳

木々の間から見えるのは、稲子岳。南壁はロッククライミングで有名らしい。

ニュウ分岐

ニュウへの分岐まで来た。どんどんペースを上げて進む。
この先はもう、突き上げるような急登はないこともあり、ものすごいスピードで進んでいく。

シラビソの登山道

ニュウへの道もまた、シラビソの森だ。

道端の小宇宙

登山道脇にふと目をやると、様々な植物が密生している。
一枚一枚の葉はみずみずしく、命に溢れいてる。
ここには宇宙があるのだと思う。

ニュウ到着

木々の間にニュウが見えてくる。到着だ。
12:28。黒百合ヒュッテから50分だ。
「ニュウ」という、不思議な名前に惹かれて、ここまでやってきた。
こちらに回らずに、丸山から麦草峠へ下りてもよかった。だが地理院地図でみるニュウと稲子岳周辺の地形は、何かとても特徴的だったし、なんと行ってもこの名前のインパクトは大きかった。少し時間が押しても、どうしても立ち寄ろうと思っていたのだ。それが今目の前に現れる。だが・・

ニュウ頂上(展望なし)

ニュウ頂上まで登るが、肝心の眺望が・・・ あああ・・・一体なぜ、俺がピークに登った途端に雲が覆うんだよ。

一瞬、白駒池

一瞬、白駒池が見えた。あの向こうまで行く。
このあとまたすぐに厚い雲に覆われてしまう。

コケモモケーキの昼食

昼食にする。 コケモモのケーキはなかなかいけます。
ニュウを13:08に出発する。

ニュウから下りてきた

白駒池手前まで下りてきた。
木道が整備され、左右には池塘が点在する。

立ち枯れの木々の風景

立枯れた木々が、独特の景観をかたち作っている。

点在する池塘

このような池塘が点在する。

白駒池

白駒池に到着する。

湖畔のシャクナゲ

湖畔にはシャクナゲが。

苔ワールド

白駒池の周囲は、苔で有名だ。地表面がうねるようだ。

森のコーヒーブレイク

八千穂高原分岐の東屋。13:53。
ここまでものすごいスピードで下ってきたぞ。
麦草峠のバスは、15:40発だ。もう余裕綽々ということで、ここで荷物をおろし、コーヒーを入れることにする。
静かな森のなかで飲むコーヒーは最高だ。

船着場

青苔荘まえの船着き場より。

箱庭のような場所

青苔荘から麦草峠まですぐだと思っていたが、これが案外時間がかかった。それにまたまた雨が降ってきた。最後まで雨に祟られる。

茶臼岳か

ザーッと雨が降りしきる中、あれは茶臼岳だろうか・・・

麦草峠到着。ついに縦走を終える

麦草峠に到着する。14:57だ。
踏破したぞ、ついに!
例によって、両拳を大きく突き上げる。
ただし、土砂降りという・・・・・

バスに揺られながら、時折見える八ヶ岳連峰を見返す。
外界の天気は穏やかに晴れ渡り、南アルプスも大きく見えている。
しかし八ヶ岳山頂方面は、厚い雨雲に包まれている。
ああ疲れた。しかし心地よい。
それに、無事だった。
雨に降られた3日間だったが、歩ききった達成感で、私は結構満ちたりていた。

茅野駅ホーム

茅野駅ホーム。奇跡的に指定が取れた。
最後はラッキーだった。

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2019南八ヶ岳縦走 第二日目

2019夏 南八ヶ岳縦走

第二日目(2019.08.03.Sat.)

◆通常のマウス操作で拡大・縮小、移動が可能です。
◆第二日目のルートは、ピンクの線で表現しています。出発地点の権現小屋、到着点のオーレン小屋までスクロールしてみてください。
◆この地図は、国土地理院電子地形図の地図タイルを使用しています。

翌朝は快晴だ。

早朝の権現岳山頂

権現岳山頂部。

ギボシ見返し

朝日を浴びるギボシを、小屋から見返す。

権現小屋出発

権現小屋出発。6時28分だ。 まずは目の前の権現岳ピークを抑えることにする。

権現山頂で記念写真

小屋裏を少し登ると尾根上の分岐があり、そこから右へ行けばすぐに権現岳山頂。 びびっとる。
標高2,715Mで記念写真。 ピエールのヘルメットのうしろが、いわゆる権現の<ピョコン>ですね。

ピョコンの裏側の恐ろしい崖

<ピョコン>の裏。こわっ。

ピョコンの上に人!

ピョコン見返し。上に人がいる!

核心部山域

赤岳の全貌とこれから進む道。ここから横岳までが今回山行の核心部だ。

ゲンジー梯子上

さて、例の有名な長バシゴの上部にやってきたぞ。
「君の名は?」
「わしか、わしの名は『ゲンジー梯子』というのじゃっ」

梯子下から

梯子を降りてきて見上げたところ。写真だと高度感が伝わらないな・・。60段ほどあるようだ

赤岳にガスがかかる

赤岳はもうガスってきてしまった。

阿弥陀岳

阿弥陀岳。険しさが際立つ。

ツルネ到着

キレット手前の「ツルネ」というピーク。 すでに晴れ間はない。

キレット小屋到着

キレット小屋到着(8:07)。
ペースが上がらずこんな時間になってしまったが、小屋前で少し休憩し、水場まで降りて給水する。

阿弥陀岳の険しい表情

一瞬の晴れ間に見る阿弥陀岳。 なんという険しさだろう。

本格的登りの開始

本格的な登りが始まる。

次々現れる岩峰

上の方には岩の少ピークが見える。あれを超えてもまた次のピーク、そしてまた次・・・

足元はえぐられている

転落に注意しながらガレた急斜面を登っていく。こわごわ振り返れば足元はバックリとえぐられ、霧が湧いて下が見えない。

急峻なルンゼの連続

上を見れば更に急峻なルンゼがつづく。

険しさが増す

険しいぞ、ひときわ険しいぞ。

濡れたハシゴ場

鎖の次はハシゴ場だ。霧雨でしっとりと濡れている。あまり上を見たくないぞ。

ハシゴ登りきり

ハシゴを登りきると・・・反対側も切れ落ちとるやないか。

頂上方向か、いやまだまだ

頂上方向だろう。左奥上方が山頂だろうか・・?
・・いやいや、これまでもそうやってダマされてきたんだ。

突き上げるような岩場

疲労もピークだが、さらに追いうちをかけるような岩峰が立ちはだかる。突き上げるようなガケを、岩角につかまりながらはい上がる。

分岐標識

分岐標識だろうけれど文字が消えていてろくに読めない。それに読む気力もない。

ルンゼにも花が

ルンゼにも花が。

まだまだ急登が

うんざりするほど、急登が次々に現れる。こんどこそ山頂かとも思うが、あまり期待せずに下を向いて登り続ける。

着いた

着いた。何も見えない。

赤岳山頂。標高2899M

赤岳山頂だ(10:42)。あ〜登りきったぜい。
標高2,899M。今回山行の最高地点だ。

北西側も切れ落ちている

山頂から北西はガッポリとえぐられている。
せっかく苦労して登ってきたと言うに、ガスでほとんど眺望はない。

仁王立ちのピエール

せめて誰かに写真撮ってもらおう。かっくい〜。

頂上山荘

頂上山荘から山頂を見返す。
とにかく疲れた。休憩しよう。山荘に入り何か食べるものはと伺うと、もつ煮込みがあるというからそれを注文する。
食べ終わると、ついウトウトとしてしまった。小屋の方に「中では仮眠はお断りしています」と言われ、気づくと1時間以上たっている。
行かなくては。

山頂出発

出発する(11:54)。
今日はさすがに登山客も多い。

展望荘到着

赤岳展望荘まで降りてくる(12:10)。ここまでの下りも、たいがいひどいものだ。それにもう降ってきたぜ、雨が。

阿弥陀岳見返し

展望荘発(12:18)。
一瞬、中岳・阿弥陀岳が見えたが・・・

このあと土砂降りに・・

・・・向かう先はこのとおり。
おいおい、下見えね〜ぞ。

このあとはもう土砂降りとなって、しばらく写真も撮っていない。
それよりも雷が轟きだした。そして音が近づいてくるこの感覚・・・
秩父の二の舞いじゃねえか。冗談じゃあない。 とにかくこの先の山荘までは往こう。雷雨がこれ以上ひどくなるようなら、今日はそこまでだ・・・。
※このとき、横岳直下に山荘があるはず、と思い込んでいるのだった。人の思い込みほど困りものはない。
<地蔵の頭>を12:24通過。

滑落!?

怖え=。

横岳への登りは思っていた以上に険しく、土砂降りで足元が非常に滑りやすい。斜面のトラバースで足を滑らせたらおしまいだ・・・。
そう思った矢先、恐ろしい光景が。
上から6名ほどのグループが下りてきたが、

「あっ」

という声で見上げると、一人が完全に宙に浮いている!
空中で背中が下を向いて一回転した!!!
下まで落ちてしまう!
と思いきや、すぐ下の岩棚の窪でかろうじて止まった。3Mくらい落ちてしまって、唸り声もない。 メンバーらが駆け寄り声をかけると、しばらくしてその男はむくむくと起き上がった。
・・・あまりの恐ろしさに、こちらは声も出ない。
岩の窪みがなかったらどうなっていたのだろう。200Mほども滑落するだろうか。
しばし呆然と立ち尽くすが、こちらに余裕もなく、先へ進むしかない。
それに、雷がまた近づいているのだ。

空中で完全に一回転している光景が、まるで動画のひとコマを切り出したかのように脳裏に焼き付き離れない。
すると今度は急斜面に寄りかかるように横たわる人がいる。
「大丈夫ですか」
「ええ、なんとか。雷が怖いのでやり過ごそうと思いまして」
見たところ自分よりだいぶ年配の方だ。
「そうですか。でもこれから天気は良くなる兆しもありませんよ。とりあえず山荘まで進んだほうがいいのではありませんか?」
(まだ横岳直下に山荘があると思っている)
するとその方は起き上がって、5Mほどあとから私についてくる。声をかけ合いながら進むことになった。

この先輩に先程の転落の模様を話すと、もっとひどい話を伺うことに。
権現岳の先の、例の「ゲンジーハシゴ」。61段の梯子だ。
先輩が下降していると、先輩よりさらに年配の70代とおぼしき男性が、ハシゴも使わずにその横を下ってきたのだという。
「危ないですよ」と声をかけるも、大丈夫だという。だが案の定滑落しハシゴ下で動かなくなった。慌てて駆け寄るとムクムクと起き上がるが、額からも肩からも出血し、シャツが血で染まっていたという。
レスキューに連絡しようかと問うと、「・・権現小屋まで戻ります」と言い残し、自力でハシゴを登り返して去っていったという。

・・・なんということだろう。なんという恐ろしい話だろう。

靴はグズグズ、雨具から水がしみて下着までぐっしょりと濡れている。横岳はまだか。

横岳到着

横岳到着(13:27)。
標高2,829Mの標識が雨にむせぶ。
「・・ここには、山荘はありませんよ」
「え」
ずぶ濡れで、展望もなく、感動を味わう間もなしに先へ。

コマクサ群落

<台座の頭>と呼ばれる小ピーク手前のタルまで来ると、幸いにも雨が小ぶりに。
見ると溶岩のザレ地の上に、コマクサの群落だ。右にも左にも!
高山植物の女王と呼ばれるこの花は、こんな栄養分の乏しいところを選んで咲くのだな・・

堂々たる硫黄岳 コマクサ群落を過ぎると、硫黄岳の堂々とした山容、そして・・

手前に硫黄岳山荘

・・・手前に「硫黄岳山荘」も見えてくる。
あ〜ここで休もう。濡れた服を乾かそう。何なら今日は、もうここに泊まってしまおう・・・。
同行の先輩は、本日はこちらで宿を予約しているという。
しかし、ここで雨は完全に止み、曇り空ながらも山々の景色が広がってきた。
ピエールよ、どうするのだ。

硫黄岳への登り

硫黄岳山荘には14:05到着。
「私は今日はこちらにやっかいになります」
「そうですか。自分は先へ行きます」
「横岳手前で、先へ促してもらってよかったですよ」
(横岳に山荘があると勝手に勘違いしていたので、なんとなくバツが悪い)
「・・それではお先に」
「どうか、十分気をつけて」
こうして硫黄岳へ、こんどこそ眺望が期待できるはずだ。

台座の頭と大同心・小同心

少し登って見返せば、正面が先程の小ピーク<台座の頭>。その右に尖っているのが<大同心・小同心>と呼ばれる岩峰群。右は阿弥陀岳

足元にコマクサ

足元にコマクサ。美しい。

ケルンを目印に登る

左にジョウゴ沢爆裂火口を見ながら、ケルンを目印に登っていく。

赤岳方向見返し

中腹から赤岳方向を見る。もう雲が湧いてくる。

雲湧き上がる大同心・小同心

大同心・小同心、横岳、赤岳、中岳。

妖しい空

妖しく曇ってきた。

硫黄岳山頂

硫黄岳山頂(14:33)。
標高2,760M。
眺望はゼロだ。楽しみにしていた爆裂火口壁も見ることはかなわなかった。
今日は一日、雨にたたられてしまった。

夏沢峠へ・オーレン小屋へ

夏沢峠を経て、オーレン小屋へ向かうことにする。 シラビソの森を下り、小屋到着は15:38となった。
小屋につく頃にはまた雨になったが、せっかく担いできたテントだ。テン泊を決断する。
受付を済ませ、テン場に向かうと、もういい場所は全て埋まっている。仕方がない。地表面が斜めで岩も出ているが、ぐずぐずしている間はない。本降りにならないうちに幕営し、食事をとって寝袋にくるまる。早く寝て明日に備えよう・・・。

だが夜中に何度もうなされて目が覚める。

・・・自分は一人ヤセ尾根を歩いているが、足元までをも霧が埋め尽くしている。踏み外さぬよう慎重に歩くのだが、

「あっ」

と思う間に、足元の岩が崩れるのだ・・・

そうして目が覚める。これの繰り返し・・・嗚呼。

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2019南八ヶ岳縦走 第一日目

2019夏 南八ヶ岳縦走

八ヶ岳主峰

5月に奥秩父主脈を5日間かけて縦走したが、最終日に金峰山からの八ヶ岳の眺めは美しく、北アルプスの前哨戦として自然と「次は八ヶ岳へ」となった。

→2019奥秩父主脈縦走へ

7月中盤の連休に山行を予定していたが、今年は長雨で天気が悪い日が続き、仕事にも忙殺されて、ついに8月の声を聞く頃にやっと天候は回復する。
8月2日(金)〜4日(日)の3日間に照準を定め、赤岳を主峰とする南八ヶ岳を縦走することとした。
概略のルートと行程は、次のようなものだ。

  • 一日目
    • 立川発 7:21 <中央線> → 8:53着 小淵沢 <takusi-> → 観音平
    • 観音平 → 編笠岳 → 権現岳(権現小屋泊)
  • 第二日目
    • 権現岳 → 赤岳 → 横岳 → 硫黄岳 → オーレン小屋(テン泊)
  • 第三日目
    • オーレン小屋 → 根石岳 → 天狗岳 → ニュウ → 麦草峠
    • 麦草峠発 15:40 <バス> → 16:52着 茅野 → <中央線> → 立川

行きも帰りも、「あずさ」の旅となる。
これまでの山行に比べ、格段に危険度も増すことであるし、秋には北アルプスを予定しているので、ヘルメットを購入して臨むことにした。
ピエールはゆく。ピエールは進む!

第一日目 (2019.08.02.Fri.)

◆通常のマウス操作で拡大・縮小、移動が可能です。
◆第一日目のルートは、緑の線で表現しています。出発地点の観音平、到着地点の権現小屋までスクロールしてみてください。
◆この地図は、国土地理院電子地形図の地図タイルを使用しています。

下り「あずさ1号」の指定席は満杯で、立ち席で往く。
小淵沢までの特急でこれより早い列車はなく、登山口の観音平までタクシーを飛ばしても、登り始めはどうしてもAM9:30前後となる。

小淵沢駅舎

真新しくモダンな駅。前はこんなんじゃなかった・・

観音平

登山口の観音平(標高約1,560M)。 かるく準備運動をして、いざ出発だ(9:29)。
このときはまだ、天気も良かったが・・

八ヶ岳の森

誰かも書いていたが、八ヶ岳の森は秩父あたりの森とちがって、なんとなくハイカラな感じがする。 林相がオオシラビソやトウヒなどの針葉樹で、樹皮が白っぽく、すくっとした立ち姿が美しい。 森がごちゃごちゃしていない感じ・・・

雲海展望台

「雲海展望台」というところにつく(標高約1,880M)。 ここまで約1時間は、ほぼコースタイムどおり(10:32)。 もう天気はぐずついてきた。展望台なのにな・・・文字通り雲海の中に入ってしまう。 このあとすぐに雨になる。

押手川

押手川到着(11:23)。標高2100付近だ。 この頃にはもう、土砂降り手前ぐらいの雨に。 晴れるはずだったのに・・

編笠への登り

押手川を過ぎると次第に傾斜がきつくなる。 雨は降りやまず、登山道は川のように・・。

岩だらけの登山道

雨であきらかにペースが落ちた。 若いもんにも抜かれてしまう。 バラ科の花だろうか・・・

ヤマシャクナゲ

ヤマシャクナゲ。 しっとりと美しい。

一瞬の青空

きつい登りだが、森林限界を過ぎて、空が明るくなる。 山頂が近いか。 一瞬の青空がのぞく。

編笠山山頂

着いた(13:11)。 編笠山山頂(標高2,524M)。 ここまで3時間でくるつもりが、コースタイムより1時間近くも遅れている。 それに全く展望は得られない。 雨は小康状態だが、気分はイマイチというところ。 予定のキレット小屋まで行けるだろうか。

編笠からの下り

山頂を出て青年小屋へと下る。 編笠山北斜面は、写真のような大ガレ石ばかりとなり、本当に歩きづらい。 小屋のテン場も見える。あの先に「乙女の泉」があるはずだ。

青年小屋

青年小屋到着。 到着と同時に大雨となる。30分ほど雨宿りを余儀なくされる。

青年小屋出発

編笠山を振り返る。 雨があがり、チラと青空ものぞく。荷物をおいたまま急いで「乙女の泉」へ。 ここの水場は夏場も枯れず、水量豊富だ。 14:48、小屋を出発する。こんな時間になってしまった。

権現岳へ

前方にするどい岩峰が見えてくる。

のろし場

のろし場到着(15:20)。

岩峰鋭し

強そうなヤマが見えてきたじゃあねえか。 あれがギボシかな・・・ 緊張が高まる。

岩山

きょえ〜
左っ側、切れ落ちとるやないか。

急登開始だ

突き上げるような急登が始まる。

編笠山見返し

こわごわ、振り返る。

ルンゼを行く

今度は上を見上げる。

編笠山と青年小屋①

少し登ってきたぞ。

編笠山と青年小屋②

振り返ると、編笠山南斜面がよく見える。 登山道の筋が見え、その下に大岩のガレ場。青年小屋もよく見えている。

まだまだ登る

さらに斜度は増す。だがもうすぐ「ギボシ」ピークか?

こちらがギボシだった

登りきると・・・・・・・次のがあるやないか。 こっちが強そうだっ。

権現岳と権現小屋

おっ、右に見えるは権現岳と権現小屋じゃないか。 するとこの強そうなのが、今度こそ「ギボシ」なわけだな。

花は咲く

こんな岩場にも、花が咲いている。 強いな〜君たちは・・

ギボシ全貌

ギボシの全貌。そうか右側をトラバースすればよいのだな。
西尾根にはゴジラのトサカが着いている。夜になれば青紫に発光するのであろう。

トラバース

そのトラバースに来る。滑り落ちるわけには行かない場所だ。

手前ピークを見返す

振り返れば、先程の偽ピーク。もうあんなに下に。

おそるおそる

きゃあきゃあ言いながら進む。

ギボシのトラバース

ギボシのトラバースのクライマックス。 恐怖感もピークとなる。

鎖場の連続

鎖場が続く。

尾根到着

ギボシ下の尾根に着いた。 ギボシピークに寄りたかったが、16時だ。 キレット小屋へたどり着かねばならない。 権現岳ピークが霞んで見える。

尾根の花々

日が傾きつつある。花々が咲き誇る。

赤岳遠望

権現小屋へと少し進むと、たちまちに霧は晴れ渡り、赤岳がその雄姿を現す。 おおお〜っ

権現小屋に立ち寄り、小屋番どのに声をかけ、「キレットまでいきます」と言い残して、一旦小屋をあとにして歩き出すが、間もなく16時半となる。 キレットまでコースタイムで1時間10分。到着は18時前になるだろう。時期的にまだ明るさは残っているだろうが・・・ しばらくの逡巡の後、ここに泊まることにした。
そうなればすぐに引き返して宿泊手続きをし、荷物を置いてギボシに登ることにする。

ギボシ

ギボシへ。
こちらから見ると、登りやすそうに見える。荷物もないのでひょいひょいと登ってみる。

権現見返し

少し登って小屋方面を見返す。斜面にへばりついて建つように見える。

小屋拡大

拡大するとこんな感じ。

ギボシ山頂より①

ギボシ山頂より、大岩ののっかる権現岳山頂(標高2,715M)を遠望する。右は三ツ頭だろうか。

ギボシ山頂より②

右へと見渡してゆけば、編笠山。編笠音頭の編笠のかたち・・

ギボシ山頂より③

今日最後に歩んできた道。

ギボシ山頂より④

ギボシ西尾根。ゴジラのトサカの裏側だ。前方は立場川方面。

阿弥陀岳〜赤岳

本日のハイライト。
左から、阿弥陀岳〜中岳〜赤岳。
中岳〜赤岳の間には、大同心・小同心の岩壁が見る。
右手から伸びる尾根が明日進む道。

ギボシ山頂より⑤

赤岳の荒々しい山肌を背に、明日の縦走尾根上にある旭岳山頂付近を拡大してみる。山頂の標識も見えている。

ギボシ山頂より⑥

権現岳北尾根部分。有名な長ハシゴのあるところ。

花は咲く

岩肌には桃色の小さな花がびっしりと咲いている。

フデリンドウ? フデリンドウも。

小屋内部

キレットでテント泊のつもりだったが、今日は権現小屋さんにお世話になることに(ここにはテン場はない)。
今日は6名程度。二階が宿泊室だ。
早めに寝て、明日は早めに起きよう。

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西瓜

今年もスイカの季節が到来した。

私はスイカが好きだ。

買うときはいつも、一玉購入だ。

何故かと問うか。

スーパーで398円の1/8スイカなど食らう気にならん。

勿体ないではないか。

398円 × 8=3,188円であるぞ。

一玉買いならば、1680円のときもある。ほぼ半分だ。

かように、一玉買い以外は大幅な割損を食うことが自明であるものを、

たびたび一玉スイカを購入して、意気揚々に家に持ち帰ることが、家人からはすこぶる評判が悪い。

しばらくのあいだスイカが夏の冷蔵庫を占拠して、ほかのを冷やせない云々・・。

一体、このスイカをなんと心得る。

われら人類のために、この季節だけまるまると赤く実ったものの恩恵を、

たかだか数日の不便を理由に排除せんと考えるは、

取るに足らぬことを大切と履き違える態度と言わねばなるまい。

そも、このごろの輩は、なあぜスイカをあまり食わんのか・・

ある時、ピエールが尋ねる。

「おいトド。スイカがあるぞ、食うよな(念押しで)。」

トドは言う。

「・・・う〜ん、今いいわ。」

ピエール

「・・・・・」

これが、全くありえぬことだと言っている。

我ら幼少のみぎりは、スイカで盛り上がらぬ輩は、大体がもぐりだと決まっている。

何のもぐりと問うか。

イカのもぐりに決まっている。

この時期スイカとなれば、大体が食う2時間も前から、いやが上にも盛り上がるものだ。

それを、「今、いいわ」だと?

頭がイカれておろうと言うものよ。スイカであるぞ、スイカ

ピエール

「よいか、トド。世の中はスイカで構成されておるのだ。スイカこそ地球であるとも言える。 すなわち、地球こそははスイカであると言っても過言ではない」

トド

「過言だよ」

ピエール

「なんやとっ、このっ」

これだから、このごろの者は考えが足りぬと言うのだ。ばかたれが。

〜スイカを愚弄するは、ついには世界を滅ぼす〜

という諺をも知らぬと見える。

あの、まるまる大玉となった濃緑のスイカを見よ。

深いみどりは、アマゾンの熱帯雨林、はたまたカナダの深い針葉樹の森を指す。

漆黒の筋はアムール川だ。あるいはシベリアの大河でもある。

稲妻形は地殻岩石の侵食をあらわす。

縦に真っ二つに割ってみよ。

真っ赤なマントルで満ち満ちて、はちきれんばかりではないか。

その上に、我らの載る薄皮の大陸プレートが、絶妙のバランスで均衡している。

すなわちテクトニクスだ。

種のつぶつぶは黒ダイヤ、すなわち我ら人類の文明発展の原動力たる石炭エネルギイにほかならない。

このような基本的なこともわからずに、ただのうのうと日々を過ごしている輩の、

なんと多いこんにちかと思う。

そのような輩には、きっといつか天誅がくだる。

その頃に斯様な真理に気がついても、もう遅いのである。

思えば高校生の頃、下宿の後輩に農家の出の者がいるとしよう(実際にスイカ農家の三男がいたものだ)。

それが、「先輩方、夏の盛りに里帰りもせず受験勉強で、さぞかし大変でしたでしょう」と、

土産の大玉スイカを裾わけに部屋へ訪ねてくる。

「先輩方」とはもちろんピエールとKさんのことだ。

しょうがないから二人がかりで三男坊の人生の相談にのってやる。

そのうち当然に、「ところでそちゃ、例の艶書などは云々・・」の話になる。

そのうちに泣きが入り、「民子が好きで、民子が好きで・・」と繰り返す始末となる。

「いっそ、強く出てみてはどうか」などと、無責任なアドヴァイスを並べつつ夜はふけてゆき、受験勉強どころではなくなる。

大概はそのままK君の部屋で雑魚寝となる。

翌日もまだ夏休みだ。

イカがぬるいと不味いので、どうして冷やそうかと相談になる。

下宿部屋には冷蔵庫などもちろんない。

大家に頼んでみることも検討された。

しかし、あの強欲ばばあが簡単に引き受けるわけもなく、

冷却の見返りにスイカの何割かを請求されては叶わぬということになり、たちまちに却下された。

そこで、K君と私は特大の大玉スイカを担いで、下宿より5分ほどの高校へ向けうんしょうんしょと歩いてゆく。

高校には、県下には珍しく屋外50Mプールがある。

午前中は部活動もあるようだが、午後にはだいたい人がいない。

案の定、入り口の鉄柵には錠前がかかっていた。

このような錠前に一体何の意味があるのか。

すぐ脇の柵をあらよと乗り越え、そちらとこちらでスイカをひょいひょいと受け渡し、

あとは、ドボンと放り込むだけのこと。

その後は校庭でしばらくサッカーをしたり、

ほかの下宿へ遠征に行っては同級生とハイスクールライフを大いに語り合ったり、

小腹がすいては金を借り、1階の商店でソフトクリームを買ったりと結構忙しく、

気づけば午後の八時ちかく、日もとっぷりと暮れてしまった。

セミがまだやかましく鳴いている。

そろそろ、水泳の時間だ。

同級生にいとまを告げ、校舎脇の水泳場へ戻る。

幸いプールには誰もおらないが、暗くてスイカがどこに浮いているのかわからない。

ズボンと上着を脱ぎ、パンツ一丁のまま、スイカ同然に我らもドボンと水に浸かる。

夏の夜のプールは、静かで、あたたかくて、たゆたうようで・・・

しばらくは、平泳ぎ・クロール・平泳ぎ・背泳ぎ・・・。

・・・ゴツンとぶつかると、それはスイカだった。