-INDEX- 奥秩父主脈縦走5日間 <2019.05.01-05>

★2019年のGW後半、かねてより考えていた奥秩父主脈を5日間かけて縦走した。

下記リンクから、縦走ルートを確認できます。
※本稿の地図には、国土地理院地図タイルを利用しています※
https://jadwigalareve.github.io/around_mt_kumotori_map_2019_05/index.html?longitude=35.813776&latitude=139.065714&zoom=13

◇マウスで拡大縮小できます◇

jadwigalareve.hatenablog.jp

jadwigalareve.hatenablog.jp

jadwigalareve.hatenablog.jp

jadwigalareve.hatenablog.jp

jadwigalareve.hatenablog.jp

jadwigalareve.hatenablog.jp

jadwigalareve.hatenablog.jp

奥秩父主脈縦走5日間 <2019.05.01-05> エピローグ

⇒INDEX

とにかく無事に5日間の縦走を終えることができて、何よりだった。大きな達成感も得られた。
初日の雨と、4日目の落雷と吹雪には参ってしまったが、それでも概ね天候には恵まれた方だと思う。

新緑の登山道

GWの後半に山行スケジュールを持ってきたのは、積雪量その他の面で(特に甲武信から国師へ抜けるルートでは)なんとなく有利か、という考えがあったからだが、大弛小屋のご主人にふるまい酒を出してもらって、
「そうだった、令和元年初日にこの山行は始まったんだ」
と思いだした。
別にねらった日程というわけではない。
だが、記念に残ることではある。

一方、代償もあった。
韮崎駅につく頃には、右膝が痛くて改札を通るのにも支障をきたした。特に階段を降りられない。

翌日朝起きると、両足が腫れている。
足の指の間の隙間が、ない。象の足のようだ。
その日(5/6)が月曜の祝日でよかった。やはり予備日は必要だった。

翌火曜日からはもちろん出勤だが、朝自分の足を見ると、足首がない。
ふくらはぎからかかとまで、同じ断面になるほど腫れている。
革靴が入らず、緩めの古い靴を出して履いた。
膝の痛みは増すばかりで、10日間は腫れと痛みが引かなかった。

今回の山行の総括が、やはり必要だろう。

1.反省点

①起床・出発時間

  • 出発前日の睡眠時間が2時間半というのは、もってのほかだ。
    それにいずれの日も、午前7時より早く出発できなかなった。
    「登山にはあるまじき行為」にも程がある。早い人ではAM3時半ぐらいから歩き出す人もいるというのに、これでは遅すぎる。
    アルプスでもどこでも、こんなことをしてたら「帰れ」と言われる出発時間だ。

  • 大弛小屋でA氏やB氏と話した際、
    「自分は準備の要領が悪いのか、起きてからどうしても2時間はかかってしまう」と言うと、
    「いやあ、みんなそのくらいかかりますよ。もっと早くおきなきゃだめなんです」と言われた。
    おっしゃるとおり。

  • 起床後、着替え・片付けをし、食事を作って食べ、テントをたたみ、荷造りをして、トイレ、水くみなどしていれば、2時間ぐらいは皆かかるようだ。
    朝5時に出るためには3時には起きなければいけない、ということ。
    これ、常識。

②食料計画

  • 昼食(行動食)には一層の工夫があってよい。
    昼食はいちいちお湯を沸かして調理している暇がない。しっかりとエネルギー補給する上でも、行動食はもっと充実化すべきだ。

  • A氏が言っていた顆粒のアミノバイタル

  • チューブの羊羹。夏場はチョコレートが溶けるので、代替にもなるだろう。
  • 毎回持っていくバタピーだが、疲労のピーク時には噛んでも飲み込めないときがある。干しブドウやドライフルーツを混ぜて持っていくのもいい。

③装備

  • 軍手を忘れた。冬山では不可だが、それ以外では必須と思う。
    防水性のグローブのインナーに軍手のつもりだったが、3日目まではグローブの方は使わなかった(蒸れるので)。
    軍手がなくて素手だったので、手が傷だらけに。軍手だとむれないで済む。それに安い。
  • また素手なので、手の甲がどす黒く日焼けしてしまった。
    日焼け止めも、必需品だった。高山ではそれだけ紫外線が強い。
  • 直前に購入した軽アイゼンは必須だった。
    一方この時期の雪は比較的締まっていて、踏み抜きはあったもののワカンまでは必要なかった。
  • 雪上でのテント設営はあまり想定していなかったが、3シーズン用でもギリギリいけた。 ただし寒いには違いなく、マットはもう一枚あったほうがよかったろう。

④ピークハントという面では

  • 悔やまれるのは、笠取山のピークを踏まずに来たことだ。それもこれも初日の雨にあたってしまい、二日目の朝の出発が大幅に遅れたことだ。 飛龍山も時間的にやり過ごす。
  • やはり初日の雨で、七ッ石山も諦めている。その意味では、雨を恨んでも仕方がないかもしれない。

⑤地図

  • 持参する地図は、「国土地理院地図(地形図)」と「山と高原地図」だ。 前者は画像切り出ししたものをトリミングして出力したものを持っていく。 後者はいわゆる登山地図で、これも必要部分をカラーコピーする。
  • 地形図については、必要情報を細かく書き込んだものを作っていく。 この事前準備には、それなりに時間がかかる。
  • まずは、各ピークの標高情報を記入する。名称のある主要なピークだけでなく、ほぼすべてのピーク(タルベも)に記載する。地形図にはもともと標高が記載されているが、標高表記がないピークにも、コンターから読み取って記載する。
  • 次にタルベからピーク、ピークからタルベの、アップダウン数値を記載する。これをしておくことで、コースタイムに比べてこの先どの程度の登りがあるのかなどがわかりやすくなる。
  • 地形図になく、登山地図に載っている情報もあるので、書き加える。 例えばピーク名や尾根の名称、水場などのほか、標準コースタイム、また展望ポイントや危険箇所などの、登山に特化した情報だ。

地形図加工①

  • 地形図はコンターを読み取れる縮尺にしておく。登山地図だと地形の読み取りが細かくできないからだ。ただ、登山地図のほうが広域を見るのに便利なので、併せ持つと万全だ。
  • 地形図は1日2枚分程度に分け、その日の分を折りたたんでウェストポーチに入れて持ち歩いた。登山中はこれを何度も出して確認する。 当日分以外の地図は、マップケースに入れてリュックに仕舞っておく。
  • 今回の山行で、この点だけは万全だったと言える。大弛小屋で地図をだしたら、皆様からお褒めいただいた。
  • またGPSを持っていないのも、皆から驚かれた。スマホでもGPS機能があるが、自分はいまだにスマホを持たないので、もっぱら紙地図とコンパスを貫いている。

地形図加工②

⑥体力面

  • 今回の山行は、自分の体力不足を痛感させられた。途中出会ったA氏やB氏は、自分よりも随分ペース早く登っておられる。
  • A氏は甲武信小屋で四日目の朝に、「昨日は甲武信を降りたところの避難小屋で泊まった」と言っていた。この「降りたところの避難小屋・・・」というのが気になって、改めて地図で調べてみると「柳避難小屋」というのがある。
  • 柳避難小屋から甲武信小屋までの登山ルートは地形図にはない(登山道に薄い破線があり、「山道荒廃」とある)。それに柳避難小屋から十文字峠まででもコースタイム4時間近くになるのだから、甲武信小屋までだと当然それ以上になる。
  • 甲武信小屋の標高が約2350M、柳小屋の標高は約1200Mだ。しかも悪路らしい。早起きしたと言っておられたが、柳小屋から甲武信経由で大弛まで、自分より早く着くのだから、本当に尊敬する。
  • 自分にはそんな芸当はできないし、ヒザ痛と体力に相談しながら、これからの登山にも臨む必要があるだろう。

秩父主脈縦走をふりかえる

  • 東京に戻ってから、10日も足が痛くてまともに歩けなかったが、夜眠る前に思い出すのはあの尾根々々のことばかりだ。
  • 初日の涸沢ノ頭の登り、二日目の長く危険箇所も多いまき道、三日目の燕山・雁坂嶺・破風山へのキツイキツイ登りや四日目の国試ノタルからの登りでは、何のためにこんなしんどいことをしてるんだ、という気にもなる。
  • 笠取山瑞牆山には登れなかった。だが甲武信・国師・金峰のピークは踏んだ。それになんと言っても、奥多摩駅から瑞牆山荘までの約75kmを踏破したのだ。奥秩父主脈縦走の達成感はひとしおだった。

最近では冬の北アルプスにも一般の登山者が入る時代だ。ベテラン登山者からすれば、この縦走も大したことはないかもしれない。
だが自分にとってのささやかな偉業を、今回は達成したと思っている。
歩んできたあの山なみの光を、忘れることはないだろう。

山なみの光

jadwigalareve.hatenablog.jp

奥秩父主脈縦走5日間 <2019.05.01-05> 第五日目

⇒INDEX

<第五日目>
大弛小屋(07:02)→朝日岳金峰山→大日岩→富士見平→瑞牆山

五日目前半地図

◇マウスで拡大縮小できます◇

大弛峠。快晴の予感。 快晴の大弛峠

朝起きる頃には、もうB氏は旅立たれた。
間もなく、A氏も。
向かう方向は同じ瑞牆だし、増冨の湯あたりであえるだろうと、この時は思っている。
朝食をつくり(朝食は自前)、ご主人にお礼を言って小屋を後にする。
どーしても、7時過ぎ出発。

小屋前の斜面を下ると、峠に出る。
舗装路は山梨側からここまでで、長野側はダートになる。
駐車場脇から登山道へ入る。 登山口

朝日岳へ、登り始める。
右足の膝の痛みは相変わらずだが、晴天が励ましてくれる。 朝日岳へ登り始め

木々の間から富士。 富士

もいっちょ、富士。 富士2

山々を従える、孤高の稜線。美しい。 富士3

そして、遥かに南アルプスアルプス遠望

ズームアルプス!甲斐駒か。 アルプス2

再び富士。 再び富士

大ナギまで来た。国師北奥千丈岳が見える。 大ナギ

ガレ場に雪が被っている。 雪のガレ場

北に目を向ければ、浅間山が見える。 浅間山

そして東には、歩いてきた峰々。 歩んできた道

右奥から雁坂嶺、東西破風山、木賊山、甲武信ヶ岳、埼玉県最高峰の三宝山、左から右手前へ伸びるのが昨日歩んだ国師への道。中央の凹んだところが国師ノタル、その先でカミナリにあった。
今日の晴天からは想像もつかない。
本当にあったことだろうか? 雁坂嶺、破風山、木賊山、甲武信ヶ岳・・・

08時50分、朝日岳山頂。
それと、輪っかのとれたストック。 朝日岳山頂

富士にたなびく雲。 たなびく雲

向かう先には南アルプスだ。 遥かに南アルプス

鉄山(左)と右に金峰山鉄山と金峰山

遠くにアルプス。五丈岩もよく見える。 金峰とアルプス

八ヶ岳がよく見えてくる。 八ヶ岳

大迫力の富士。 大迫力の富士

稜線にはまだ残雪が多い。 まだ雪深い

鉄山の樹林帯を抜けると広い展望となる。 樹林帯を抜ける

金峰頂上が近づいてきた。 山頂への道

五丈岩が大きく見えてくる。 五丈岩が見える

金峰山山頂。10時02分だ。標高2599M。 山頂到着

何度でも撮りたくなる富士! 何度も富士

そして、五丈岩。 五丈岩

国師方面。だいぶ遠くなった。 国師方面

八ヶ岳八ヶ岳

これから進む、有名なギザギザ稜線。
遠くには南アルプス。さらに西には中央アルプスも。 南アルプスに中央アルプス

左は瑞牆山。右が小川山。 瑞牆山と小川山

実は余裕があれば、4日目に甲武信から金峰小屋まで行き、5日目に八丁平から小川山へ、そこから稜線を瑞牆山へと進んで、瑞牆山から下山しようとも考えていた。
そのために地形図も準備してきた。
だが自分の体力的にも難しかったろうし、第一あの雷と吹雪では、そんなオプションは一瞬で吹っ飛んでしまった。

五丈岩の大きさが、写真ではなかなか伝わりづらいだろう。
鳥居と登山者が数名見える。
テッペンまで登る輩もいらっしゃるそうだが、自分はゴメンだ。 五丈岩の大きさ

まだ10時30分だ。コーヒーを入れて少しゆっくりすることにする。 コーヒーを入れる

五丈岩の脇で神奈川から来ているという「C氏」に写真を撮ってもらう。
コーヒーカップを片手に得意満面・・・のつもり。 五丈岩の横でアルプスをバックに

国師・甲武信もこれで見納め。 見納めの国師・甲武信

こちらが金峰山頂。
五丈岩のテッペンと、どっちが高いんだろう。 金峰山頂振り返り

勇ましい姿。 鳥居を従える五丈岩

手前の石だけでも巨大だ。 巨大な岩

八ヶ岳。中央が赤岳か。 八ヶ岳

甲斐駒ヶ岳方面だと思いますが、・・・ 甲斐駒ケ岳

登山道は十文字になっている。
南へ下る昇仙峡方向のルートもあるようだが、崖のようなこの斜面を行くルートがあるのですな。 五丈岩脇の標識

五日目後半地図

◇マウスで拡大縮小できます◇

金峰を後にする。 金峰を後に

ギザ尾根を下ってゆく。
ここから瑞牆山荘まで、標高差およそ1100Mを一気に降りる。 ギザ尾根

山頂方向見返し。 山頂見返り

遥か下に見えるのが瑞牆山荘辺りだろうか・・・?
どんだけ下るんだよ。 遥か下に瑞牆山荘か?

ギザ尾根の先に瑞牆山も大きく見えてきた。
大日岩も見える。 瑞牆山

五丈岩ほどでなくても、大岩が連なる。
右膝の痛みはひどいものだったが、今は降りなきゃ帰れない。 大岩連なる

金峰小屋分岐まで来た。標高2470あたり。
登山道に雪が付いていくる。この先でアイゼンを装着する。
金峰山小屋分岐

だいぶ下ってきた。
人気のルートなので、登山客も多い。続々と登ってくる。 続々と登ってくる登山客

千代ノ吹上というところ。 千代ノ吹上

なかなか足がすくむところだ。 足がすくむ

足下がえぐれているのか・・・ えぐれる断崖絶壁

砂払ノ頭から。八ヶ岳が本当によく見える。 砂払ノ頭から八ヶ岳

樹林帯に入る。美しい森だ。 美しい樹林帯

樹林帯の合間から、とつぜん巨大な岩が見えてくる。
大日岩だ。
いつの間にか13時04分になっている。特に下りでは膝の痛みは増すばかりだ。 巨岩現わる

ここで金峰山頂は見納めだ。
標高2180M付近。420Mほど降りてきたこととになる。 大日岩から金峰見返り

五丈岩、そして金峰よ、ありがとう。 ありがとう、金峰山

大日岩の左を巻くように下っていく。
ちなみに八丁平へは、大日岩の右を巻くように登る。
登山地図にはわざわざ、「岩場のトラバースが極めて危険」と書かれている。強い表現で注意を喚起しているわけだ。 大日岩の西を巻く

13時38分、大日小屋通過。 大日小屋

帰りに増冨ノ湯で、ひとっ風呂浴びたい。
それには、瑞牆山荘前15時20分発のバスに乗らないと、そのあとのバスがない。

だんだん焦っってきた。

富士見小屋。14時10分だ。トイレを使わせてもらう(有料)。 富士見小屋

大日小屋から富士見小屋までも、ここから瑞牆山荘までも結構な急下りだ。
大日岩を過ぎてから、右膝は悲鳴を上げ続けている。
しかし・・・

ついに山荘の赤屋根が見えてくる。
歩ききったぞ! 山荘の赤屋根が見えてくる

14時39分、瑞牆山荘到着。 ついに歩ききった

ああ、とうとうここまで来た。
ストックを天高く突き上げる。
5日間、奥多摩駅から奥秩父主脈をとうとう歩ききった。
雲取〜笠取〜甲武信〜国師〜金峰と繋いでここまで。
家族で来ている子供だちもいたが、きょとんとしてこちらを見ている。
かまうものか。おれはやったんだ。

バスの時間まで山荘でコーヒーでもと思いカフェのテラス席へ行くと、金峰山頂で写真を撮ってもらったC氏がいるじゃないか。
お互い無事の下山を喜ぶ。

バスを待っていると、山ガールが2〜3組集まってくる。
C氏から、自分が奥多摩から来たと聞いて驚いている。

「え〜っ、東京から歩いてきたんですか?」
「ほんとにい!」

すこし得意になる。これも悪くない。

A氏やB氏はどうしただろう。この後も会えなかった。
特にA氏とは、石尾根からずっと同じ道を歩んできた。
たぶん、2本ぐらい前のバスで帰ったのだろう。自分より出発時間も、歩くペースも早かったしな・・。
このあと寄った増冨ノ湯でも見かけなかった。
なんとなく、この瑞牆山荘あたりで再開できるものと思っていたのだが。アドレスぐらい聞いておけばよかった。
このブログを見てくれないものだろうか・・。

帰りのバスは、ミツバツツジの咲き誇る美しい渓流を、韮崎まで下っていく。
やがて、南アルプスの巨大な山塊が見えてくる。
もう、しばらくどこの山にも登りたくない・・・と思いながらも、ゆれるバスのなか、心地よい疲れのなかで、次にはアルプスへ・・なとど考えている自分がいる。

とにかく今は山を降りて、家に帰ろう。

<第五日目 終了>

⇒エピローグへ

jadwigalareve.hatenablog.jp

奥秩父主脈縦走5日間 <2019.05.01-05> 第四日目

⇒INDEX

<第四日目>
甲武信小屋→甲武信ヶ岳→富士見→両門ノ頭→東梓→国師のタル→国師ヶ岳北奥千丈岳→大弛小屋

◇マウスで拡大縮小できます◇

寒くて、寝返りを打つたび何度も目が覚めた。
5時過ぎまでシュラフにくるまって、ぐずぐずしている。
寒いので、テントはそのままに小屋へ行って、またおでんをいただくことにした。
そして急いで準備をしてテントを撤収する。
さすがにおでんだけだと足りないので、小屋前のテラスで食事を作る。

甲武信小屋

そこへ、思わぬことにあのA氏が現れ、再会を喜ぶ。。
あの、石尾根で抜かれ、雲取避難小屋で再会して以来、ここまでつかず離れずでお互い来たわけだ。

「あ〜、どうも。ここにお泊りでしたか」
「いえ、降りたところに避難小屋があるでしょ。ここからだとちょっと距離ありますけど、そこで泊まって朝から上がってきたんです」
「そうでしたか。またお会い出来ましたね。大弛までですか?」
「そうです」
「僕も、飯食ったら行きます。」
「では、後ほどお会いしましょう」
「そうしましょう。お気をつけて」

この時は、なんだかうれしい気持ちになったのだが、あとでびっくりすることに気がついた。これは後述することにする。

出際に、せっかくなので小屋のご主人(息子さん?)と写真を取らせてもらう。 手と手を取り合う記念撮影

「大弛小屋のご主人によろしく伝えてください」
といって、送り出してもらう。
さて出発だ。トイレを済ませ、水も汲み、アイゼンを装着して、あ〜やっぱり7時だ。
せめて6時には出なさいよ。

07時24分、甲武信ヶ岳山頂到着。標高2475Mだ。
山ガールに写真を撮ってもらう。 甲武信ヶ岳

ここは、言わずとしれた三国境にして三川分水嶺だ。
甲斐・武蔵・信州の三国の境目であり、それぞれへと流れる富士川・荒川・千曲川が別れる場所でもある。

甲武信ヶ岳山頂より。
これから向かう国師までの尾根の全貌が見渡せる。 これから進む尾根

今朝は冷えたが天気もよく、よし、国師ヶ岳と、奥秩父最高峰の北奥千丈岳山頂(2601M)を踏むぞ、と決意を新たにする。
まさか、後にあのようなことになろうとは想像もできなかった。この時は。

分岐到着。
写真右は、千曲川源流地点を経て、毛木平へのルートだ。
国師へは、写真奥側へ進んでいく。 千曲川源流分岐

07時52分だ。山頂でゆっくりしすぎたか。 積雪多し

水師のあたりか・・・
この先の尾根は、だいたいこんな感じだろう。 水師あたり

(2373)富士見到着。
09時22分にもなっている。少し焦る。
写真のように、甲武信から国師にかけては、本当に倒木の多いコースだ。 富士見

ここで、90°左に折れる。
本日のルートでは、3箇所ほど90°ターンがある。 90°ターン

(2263)両門ノ頭に着く。10時02分だ。
展望ポイントなので少し休む。
天気もよく、国師・金峰方面もよく見える。 両門の頭

写真中央の残雪あざやかなピークが、金峰山だ。
いよいよ見えたか。
左は朝日岳か。 朝日岳・金峰山

両門ノ頭の目の前が塩山尾根。
左が鶏冠尾根。・・・ということになっている。 塩山尾根を見下ろす

足元のすぐ先は切れ落ちている。手すりはもちろんない。 足元が断崖

さて、ここから先へ進むにはどこから行けばよいのか?
正解は、この写真のがけの先右下へ降りる。
これがわからずに、一旦100Mほど戻ってしまった。
こういうのが一番しんどくなる。 進路あやまる

東梓から国師ノタルあたり

◇マウスで拡大縮小できます◇

東梓手前の、90°ターンのポイント。 90°ターン2

写真のようにロープを張ってくれている。 なんだか曇ってきた。 曇ってくる

おやと思うと、パラパラとひょうが降ってくる。
急に寒くなってきた。随分遠くでゴロゴロと音が聞こえたような気がする。 ひょうが降ってきた

(2271.8M)東梓に到着。11時28分だ。 東梓

気温が下がって風が出てきた。
グローブを出す。 グローブを取り出す

季節にはヤマシャクナゲが美しいことだろう。
このルートはしかし、道迷い遭難が起きやすいエリアだ。
今は残雪があり踏み跡をトレースできるので、アイゼンは必要だが逆にルートはわかりやすい。
雪がなくなると途端に、人気もなく踏み跡のうすい迷い道となるのだろう。 シャクナゲの咲くであろう登山道

(2224)か。 再びひょう

また、ひょうが降りだす。
雷鳴がはっきりと聞こえてきたが、まだ尾根の東側で比較的離れているようだ。
しかし、樹林帯の中にもかかわらず、冷たい風が吹き込んでくる。強い寒気が流れ込んでいる感じだ。
雷が近づく前兆としてよく言われることなので、何か嫌な感じがしてきた。

12:17分、国師のタルに到着。標高約2155M。
簡単な昼食を取る。 国師のタル

ここから、標高差にして約450Mちかく登る。
ひょうだったのが、ほとんど雪になってきた。
雨具を出す。
それにしても、本当に倒木が多い。 国師への登り始め

標高が上がるにつれ、あたりも残雪が深くなってきた。
そしてはっきりとした雪になってきた。
だが、それよりももっと恐れていたことが現実となる。
ごろごろとした大きな雷鳴が、尾根の東からだけでなく、反対の西側からも聞こえ、それも間近に迫ってきた。
ひゅうひゅうという風切音。
そして、パッと光って後に「どーん」という大きな音がするのが、間隔がせばまってきた。 雷迫る尾根

そしてついにその時がくる。

閃光とともに
「ドカーーーン」(!!!)
という炸裂音、というか爆発音。
ーーーミサイルでも着弾したようなとてつもない轟音。
一瞬あたりが白く煙ったような・・・。
その場に倒れ込むように伏せる。
耳がキーンとする。

距離にして、100Mか、200Mか・・・。
体がガクガクと震えているのがわかる。
もちろん寒いからではない。
そのまま動けなくなった。

どうすればいい、どうすればいい。

とにかく、ストックを3Mくらい放り投げて、伏せたままでいる。
間もなくまた、「どーーん」と近くに落ちる。
20〜30分動かずにいた。

写真は雪面にへばりついた姿勢から起き上がろうとした途端に、アイゼンで雨具のズボンを引き裂いてしまったものだ。
シャアアアーーーーーッと、派手な音がした。 雨具のズボン裂ける

雷はだんだんと落ちる間隔が長くなり、少し遠ざかったようだ。
さて、どうするか。
どうするもこうするもない。
このコースには、エスケープルートはないのだ。
それにこんな時間から、甲武信小屋まで引き返せるわけでもない。
進むしかないんだ。
それに雷がすこし遠ざかっても、今度は本格的な降雪となってきた。
もはや停滞は許されない。さっさと登れ。

国師ノ肩のまだ手前。2465ポイントだと思う。
ゴールデンウィークの風景だ。 2465ポイント

右のほうが国師かな・・ 国師が見えてくる

リュックに雪が積もっている。
リュックカバーを出すのも忘れている。 リュックに積雪

天狗尾根か。
・・・また雷が近づいてきた。空じゅうでゴロゴロ言っている。 また雷が・・・

ふと、「尾根筋にこれだけ倒木が多かったのは、雷の直撃で樹木が根本から折れたものか・・・」という考えに行きつく。
自然と足早くなる。やばいぞ、やばい・・。
つんのめりそうだ。

完全に冬の風景・・(下写真)。
これがゴールデンウィークの風景だ。 冬の風景

西の空に、一瞬晴れ間がのぞく。 一瞬の晴れ間

この標識、国師ノ肩か。 国師ノ肩

正面が、今度こそ国師だろう。 国師山頂が見えてくる

吹雪になってきたぞ。 吹雪の登山道

あれか、頂上標識は。 国師ヶ岳

15時23分、国師ヶ岳到着。標高2592Mだ。 頂上標識左が北奥千丈岳

さて時間も押しているが、北奥千丈岳はどうするか?
吹雪は止む気配がない。
だがここまで来て、奥秩父最高峰を踏まずに帰るのか。
いいや、それはナシだ。
意を決し、分岐で荷物をデポして、ピストンを決行する。

15時33分、北奥千丈岳。標高2601M。 北奥千丈岳到着

ついに、ここまで来てやったぞ。 山頂の自撮

左が国師ヶ岳。写真では向こうがむしろ高く見えなくもないが、標高差で約9Mこちらが高い。 国師見返し

一瞬、朝日岳方向が見える。 朝日岳方面

この先は、奥千丈岳への尾根が続くが・・・もちろん引き返す。
秩父最高点は、確かに踏んだぞ。
吹雪が激しくなってきた。 奥秩父最高点

分岐に戻ってきた。
木の下にデポしたリュックが、だいぶ雪を被っている。 再び分岐

埋まった標識に、「大弛峠」の文字が。
ここから210Mほど下れば、大弛小屋だ。急ぐぞ。 埋まった標識

降雪で、トレースが消えてしまうことを考えると空恐ろしい。 雪降り積もる

右が北奥千丈岳北奥千丈岳見返り

こっちが、国師かな。 国師見返り

甲武信方面が見える。あゆんできた道。 甲武信方面

さて、ここからの下りで、またしても事件が。
積雪が深いところもあり、時に太もものあたりまで踏み抜きながら歩いていたのだが、ある瞬間にアイゼン同士が絡まって、両足首が固定されてしまい、前のめりに倒れてしまう。
顔面強打はなんとか免れたが、ストックが手首近くまで埋まってしまい、引き抜いたら先端の輪が抜けてしまった。
いくら掘ってもわからず、諦めることにした。
しばらく行くと、木段が現れる。
久々の人工物を見て、安堵が広がる。

着いた。ははは・・生きているぞ。 大弛小屋到着

大弛小屋。16時19分到着だ。 小屋玄関

「こんにちは」と扉を開けると、入り口のストーブ脇に、A氏がいるじゃないか。
むこうも、「お〜〜っ」。
こっちも、「お〜〜〜っ」。

小屋のご主人に、
「すみません、今日小屋泊したいんですが。」
「いいですよ、ただご飯は?」
「ご飯もいただきたいんです。」
「準備がもう終わっちゃうんだよね・・」
「そこをなんとか・・。自分は何でもいいです。」
「う〜ん、なんとかしましょうか・・」
無理を聞いていただいた。申し訳ない。

その日の夕食は、これまでの4日間の食事とは全く比べようもない、豪華なすき焼き鍋!
おでんとデザートのプリンも付いている。
それに、「令和になったから、祝い酒だよ」といって、白ワインのグラスまで付いている。
感動以外の何物でもない食事にありついて貪り食ったので、写真もろくに撮っていない。

大弛小屋のご主人。ありがとうございます。 ご主人、ありがとう

こちらは自転車で峠まで登ってきたという、チャリダーのお二人。 食事風景

こちらB氏は、A氏や私のように奥多摩からではないが、大菩薩嶺のほうから越えて来たというから、強者でいらっしゃる。 感動のすき焼き鍋

食後にこたつを囲んで、A氏やB氏、チャリダーのお二人、その他の登山者の皆さんと、楽しい山のお話をして盛り上がった。
いつの間にか私も、今日のカミナリと吹雪のくだりを皆さんの前で力説している。
「尾根でそれじゃあ、ほんとにキツかったですね」
とねぎらってもらった。
皆様、自分より1時間半は早く着いていらっしゃる。
だいたい、出発が遅いんだよ。

さて明日は金峰だ。
ここまで来たら、なんとか瑞牆山荘まで、今回の縦走をつないで完結させたい。猛吹雪とか土砂降りにならなければの話だが。
A氏、B氏とも、明日は金峰だけでなく、富士見から瑞牆山にも登るという。
自分は、足の状態もあり、大日から瑞牆山荘へ降りることにしている。
一心地つくと、思い出したように膝が痛み出しているからだ。
明日の天気を祈り、床につく。
久しぶりに床の上で横になり、あっという間に眠りに落ちる。

<第四日目 終了> 

⇒第五日目へ

jadwigalareve.hatenablog.jp